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求道者・青山修子が柴原瑛菜と磨いた“二人でポイントを取るテニス”

写真は2023年「全豪オープン」での柴原(左)と青山(右)

時計の針を5年前に巻き戻す。18年全豪オープン女子ダブルス、3回戦で第6シードのペアに敗れた青山修子は口惜しさを噛みしめていた。

「課題がたくさん見えた。上に勝つには、もっとダブルスを理解してやっていかなくてはいけない」
話しながら、次第に声がうるんでいった。その時点でプロ9年目、大卒で競技生活に入った青山は30歳になっていた。

13年にウィンブルドンで準決勝に進出。米国のシティオープンでは12年から3連覇を果たすなど、ダブルスでは強豪の一人だった。その青山が、ダブルスが分かっていない、と自分を叱るのだ。秘訣は楽しむこと、などと鷹揚に構える選手もいるが、青山は求道者のようにダブルスに向き合ってきた。ダブルスを極める、改めてそう誓ったのが、この頃だったと思われる。

柴原瑛菜というパートナーを得て、21年にはツアー5大会に優勝、ツアー最終戦のWTAファイナルズでも4強入りを果たした。四大大会ではベスト4止まりで、決勝進出が壁になっていたが、今大会で初めて悲願を達成した。

19年のコンビ結成から、二人のスキルの向上、とりわけコンビネーションの進歩が著しい。柴原が力強いサーブとグラウンドストロークでチャンスを作り、青山が前で積極的に動き、ボレーで仕留めるのが必勝パターン。しかも、その連係の質が高い。

「後ろ(ベースライン)からいいボールを打って、青さんのために(ポーチに)出やすいボールを、と頑張りました」

ココ・ガウフ/ジェシカ・ペグラ(アメリカ)の強豪ペアを破った準決勝での柴原のコメントだ。しっかり打つだけでなく、パートナーの動きを理解し、イメージしながらのプレーであることが分かる。青山もその柴原を信頼する。これも同じ試合での談話だ。

「(ネットで)動くって決めたときに、柴原選手と連係が取れるので、それとあわせて彼女に任せるプレーを入れながらできた」

自分の動きに柴原が必ず連動する、ボレーで仕留めることができなくても、カバーしてもらえるから陣形は崩れない、無理に攻めなくてもベースラインでチャンスを作ってくれる--そんな安心感が、青山の思い切りの良さを引き出すのだ。

注目すべきは、必勝パターンの裏返しの形、青山がベースラインで柴原がネット(前衛)の陣形でも十分戦えていることだ。

小柄でフォア、バックとも両手打ちの青山のグラウンドストロークは、例えばガウフのような強打者には分が悪いと見られていた。サーブも、リターン力の高い相手には力強さが足りなかった。だが、準決勝で青山は自身のサービスゲームをすべてキープした。青山のサーブは良い回転が掛かり、球速はなくても相手の攻撃を許さない。ストローク戦では青山が相手に食い下がり、柴原がネットでプレッシャーをかける。その連係でラリーを互角以上に進めることができる。そんなコンビネーションが随所に見られた。

二人がこの陣形に自信を深めたのは、アナスタシア・パブリュチェンコワ(ロシア)/エレナ・ルバキナ(カザフスタン)という強打のペアを破った3回戦だ。

「どちらが前にいても、前で決めるプレーができている。私も後ろ(ベースライン)で耐えられるポイントが増えている。その意味で、二人でポイントを取るシチュエーションが増えた」

と青山。これに柴原も同調した。

「前は、私が前でプレッシャーをかけられていなかったのかなという反省があった。今日は相手が後ろが強いので、なるべく私も前にいるときにプレッシャーをかけて、ポーチに出られるときは出て、出ないときも相手に考えさせる動きを出すように気をつけていた」

個々がプレーの質を高め、二人の連係がより強固になる、そんな理想型が実現している。すなわち、「二人でポイントを取る」形が増えている。そこが今の「青柴ペア」の強みだ。

決勝の相手は第1シードのバーボラ・クレイチコバ  /カテリーナ・シニアコバ  (チェコ)。昨年は全豪、ウィンブルドン、全米を制した女王ペアで、全豪の決勝進出は3年連続となる。

「相手の攻撃的なプレーに対し、いかに引かないで、耐えて(本来の攻撃パターンを)やり続けられるか」

と青山は試合を見据える。難敵中の難敵だが、青柴のコンビネーションを試すには格好の相手だ。

(秋山英宏)

※写真は2023年「全豪オープン」での柴原(左)と青山(右)
(Photo by Robert Prange/Getty Images  ) 

**WOWOW放送・配信情報**

「全豪オープンテニス」1/16(月)~1/29(日)
WOWOWで全日生中継!WOWOWオンデマンドでは全コートをライブ配信! 

1/29(日)午後0:50[WOWOWライブで生放送]【WOWOWオンデマンドでライブ配信】
女子ダブルス決勝「バーボラ・クレイチコバ/カテリーナ・シニアコバ vs 青山修子/柴原瑛菜」

■放送情報などはこちらから■
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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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