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勝利に近づいたルーネが直面した「残酷な3ポイント」

全豪オープン2023でアンドレイ・ルブレフと対戦するオルガ・ルーネ

テニスという競技のいい所は、やり直しが利くことだ。第1セットで失敗しても第2、第3セットがある。リードをふいにして追いつかれても、再び引き離せばいい。だが、オルガ・ルーネ(デンマーク)は、その“やり直し”に失敗した。

第4セット、ルーネは5-3でサービスゲームを迎えたが、ブレークを許す。次のゲームでブレークに成功、6-4で取り、2セットオールに追いついたからよかったが、痛恨のブレークダウンだった。
最終セット、ルーネは5-3と王手をかけてのサービスゲームを迎える。今度こそはと意気込んだはずだが、これもラブゲームで落としてしまう。さらに6-5からの相手サービスゲームでは、マッチポイントを2本しのがれた。
結局、6-6となり、勝負の行方は10ポイント・タイブレークに委ねられた。ルーネはここでも5-0と大きく先行しながら、逆転を許してしまう。何度も何度も勝利の盃に指先を触れながら、これを取り落とす結果になった。

「ベースラインでのプレーは力強かったと思う」と振り返ったルーネだが、「プレッシャーのかかるポイントだけは、もっとうまくできた」と但し書きが付いていた。後者が彼の本音だろう。
若手随一のボールストライカーだが、第4セット、第5セットの重要な場面では、腕が縮んで安全策のショットが目立った。サーブも同様、肝心な所で思い切りが悪く、ファーストサーブの確率も上がらなかった。

「最後のほうは、もっといいサーブができたかもしれない。ちょっとした緊張感だと思う。僕はこのことに取り組まなければならない」
全体としては、まずまずの出来、しかし、トップ10選手に勝つにはそれでは足りない。19歳ルーネは、このことを痛感し、反省の言葉を残した。

この大接戦を見ながら、前日のセバスチャン・コルダ(アメリカ)の熱戦を思い出さずにはいられなかった。第10シード、フベルト・フルカチュ  (ポーランド)との4回戦も、最終セットの10ポイント・タイブレークにもつれたが、コルダが10-7で制した。
コルダもまた硬くなったのか、普段は見られないミスがあり、リードをふいにする場面があった。だが、マッチポイントでは弾道の高いボールで相手を動かし、自分からポイントを取りにいった。リスクのある低い弾道のショットを安定して打ち続けるところがコルダの非凡さだが、味わったことのないような緊張の中、次善の策を試み、これを成功させたのだ。

10ポイント・タイブレークで7-3と先行しながら、4ポイントを続けて失い、7-7に追いつかれた。そこからの鮮やかな逃げ切りだった。コルダは「大きくリードしていたのに追いつかれ、どうにかこうにか切り抜けられた。簡単なことではなかったが、あの締め方にはとても満足している」と苦笑しながら試合を振り返った。確かに、非の打ち所のない、見事な試合の締め方だった。

ルーネについて「若手随一のボールストライカー」と書いたが、22歳のコルダもそれに劣らぬボールストライカー、ショットメーカーだ。この4回戦では明暗が分かれたが、ともに才能溢れる若手だ。
二人の熱戦はともに10ポイント・タイブレークで決着したが、さらに奇妙な符合に気がついた。ともに7-3まで離しながら、追いつかれている。そこからコルダは勝ち、ルーネは敗れた。勝者となったコルダは言う。

「10ポイントまでプレーする練習はあまりしていないので、(7ポイント・タイブレークより)さらに難しくなる。最後の3ポイントは最も難しい。ある意味、残酷だ」

ルーネはその残酷な3ポイントの犠牲になった。早く「8」、そしてマッチポイントを意味する「9」という数字にたどり着きたかった。ところが逆に6ポイントを連取され、7-9と相手にマッチポイントを握られるのだ。
それでも、8-9、つまり2度目の相手のマッチポイントでのラリーは最大の見せ場だった。劣勢となったルーネだが、起死回生のバックハンドのダウン・ザ・ラインを放つ。これは素晴らしかった。この試合でのベストショットに選んでもいい。惜しむらくは、この時点でルーネはこうしたカウンターパンチに頼らざるを得なかったことだ。自分から点を取りにいくプレーができていれば、別の結果があったかもしれない。

ルーネとコルダの精神面の差について語ろうというのではない。紙一重で勝利を逃すのは、どの選手にも起こりうることだ。
コルダは記者会見で「勝利にたどり着くカギ」について、こう話している。「僕は自分のミスや過去にあったことから学び、それをこのような試合で生かして前に進んでいくことに長けていると思う」

ルーネは、痛みとともに多くを学んだことだろう。テニスはやり直しが利く。次の機会に、やり直しを成功させればいい。

(秋山英宏)

※写真は「全豪オープン」でのオルガ・ルーネ 
(Photo by Cameron Spencer/Getty Images  ) 

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【全豪オープンテニス 男子シングルス4回戦 ルーネ VS ルブレフ】https://wod.wowow.co.jp/content/122196
【全豪オープンテニス 男子シングルス4回戦 コルダ VS フルカチュ】https://wod.wowow.co.jp/content/122192

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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