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グランドスラム初出場の綿貫陽介。“この1球”への集中力に注目すべし

全豪オープン2023での綿貫陽介

24歳の綿貫陽介が8度目の挑戦で初の四大大会予選突破を果たした。「ホントによかったなって……」。いつもは型どおりの受け答えを嫌い、言葉を選んで受け答えする綿貫だが、この囲み取材では素朴なフレーズを繰り返した。こみ上げるものがあったのか、しばしば言葉が途切れた。

ジュニア時代には世界ランキング2位をマークした。ホープと目され、錦織圭の後継者と呼ばれることも多かった。錦織もその才能を高く買い、サーブとストロークには一目置いていた。

だが、そのタレントは四大大会本戦の壁がなかなか破れなかった。20歳で迎えた19年全豪では予選決勝(3回戦)に進んだが、最終セット4-6でインド選手に勝ちを譲った。

「その時に(本戦に)上がれれば一番よかったんですけど、そのあとグランドスラムに出られない時期とか、予選で早めに負けてしまうこともあったので、ホントに長かったですし、一つ、壁というか、一つ乗り越えなきゃいけないなと」

本戦初出場を決めた綿貫が味わっていたのは、一つには、長い呪縛を解かれた解放感だろう。

昨年後半から好調だった。日本国内で4週続けて開催されたATPチャレンジャー(下部ツアー)で2大会に優勝、準優勝1と、出場選手でダントツの成績を残し、第1戦開幕前のATPランキング227位から145位に飛躍した。今大会の予選開幕前には138位に浮上。最高の状態で臨んだ予選だけに、期するものがあった。

「成長できた部分がすごく大きく、去年1年は特にそうですけど、それがだんだん結果になり、自信にもなってきていました。調子の良さはもちろんあったので、僕の中では今回こそはというのが強くて、絶対、予選上がってやろうと思っていました」

四大大会の予選決勝進出は3度目だった。強い思いが、とうとう壁を砕いた。

成長が顕著にあらわれているのは、どの部分か。フォアハンド・ストロークは決定力が上がり、バックハンド・ストロークはシャープさに柔らかさも兼ね備える。もちろん、サーブは有力な得点源だ。だが、注目すべきは1球への集中力の高さ、一打への執念ではないか。

ときに丁寧に、ときに大胆に、1ポイントを取りにいく。大事なポイントを制すると、陣営の席に向かってガッツポーズを作り、雄叫びをあげる。その集中力が最後まで途切れない。

昨年11月の四日市チャレンジャー決勝でのプレーが象徴的だ。終始、強風が吹き、準決勝まで粘り強いプレーを見せていた相手のポルトガル選手はリズムを壊した。だが綿貫は乱れなかった。ミスをしないようにという安全運転ではなく、強いボールを打とうと心がけ、なおかつ安定性を落とさなかった。

「とにかく目の前のボールを一所懸命打つことしか考えられなかった。相手は本当にいいプレーヤーで、先を見ると嫌になるような選手なので、目の前の1球を、集中力を高くして、少しでも強いボールを、というイメージでいました」

優勝カップを手にした綿貫の談話だ。攻撃でも守備でも、強打も、ゆるいつなぎ球も、常に集中を保ち、すなわち「全力」で打ち出したボールだった。

今大会の予選決勝でも、そんな全力ラリーが見られた。ここ一番というポイントでは、サービスエースを決めた。トップ100プレーヤーにも見劣りしないゲーム運びだった。試合後、集中力について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「自分的には、すごく成長できたなって思っている。ここに来るのに時間がかかった分、言葉にすると軽々しくなるんですけど、いろんな人への感謝とか、ホントに自分一人ではテニスってできてないんだなっていうのが僕の中では強くなった。昔は自分一人でやっていて、何でもできるような気がしていたので、そういう部分では少し大人になったのかなと思う」

その心構えが、集中力を支えている。周囲のサポートや期待を肌で感じ、だからこそ、1球をもおろそかにできないと強く思い、ボールを捉えているのだろう。

兄の敬介コーチなどチームの助けを借りれば、もっと強い相手にも勝てる。一人で何でもできると思い込んでいた鼻っ柱の強い少年は、グランドスラム本戦への長い道のりで、これらを学んだのだ。

予選初挑戦の18年ウィンブルドンから4年半でつかんだ初舞台。長い助走を決して無駄にはしないはずだ。

(秋山英宏)

(写真:全豪オープン2023での綿貫陽介)
(Photo by WOWOW) 

「全豪オープンテニス」1/16(月)~1/29(日) ※大会第1日は無料放送
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大会第1日デイセッション 1/16(月)午前 8:30~[WOWOW ライブ] [WOWOW オンデマンド]
【男子シングルス1回戦】 綿貫陽介 vs A.リンデルネック
【男子シングルス1回戦】 M.イーメル vs 西岡良仁
【男子シングルス1回戦】 E.エスコビード vs ダニエル太郎
※【女子シングルス1回戦】 B.ペラ vs 内島萌夏は WOWOW オンデマンドでライブ配信

大会第 1日ナイトセッション 1/16(月)午後 4:45~[WOWOW ライブ] [WOWOW オンデマンド]
【女子シングルス1回戦】 I.シフィオンテク vs J.ニーマイヤー
【男子シングルス1回戦】 M.ギロン vs D.メドベージェフ

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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