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鈴木貴男が振り返った全豪オープンでのフェデラーとの対戦「自分のテニスをするしかない」

写真はロジャー・フェデラー(左)と鈴木貴男(右)

まもなく開幕となる全豪オープン2023。 
昨年惜しくも引退したロジャー・フェデラーは、全豪オープンは2004年・2006年・2007年・2010年・2017年・2018年の計6回の優勝という成績を残しています。2005年の全豪オープン2回戦にてフェデラーと対戦した鈴木貴男さんにテニスが大好きなWOWOWアナウンサー川又智菜美がインタビューを敢行、全豪とジャパンオープンの過去2回の対戦について、聞いてみました。

ーーードローを見て、フェデラーと当たる可能性があると知った時の気持ちはいかがでしたか?

ドローを見た時に、「一回勝てばフェデラーと当たれる」という思いがありながらも、そんな簡単にはいかないだろうなと思いました。グランドスラムを一回勝つということは容易なことではありませんから。ただ、一回戦の相手が以前にも勝ったことのある選手だったので、「自分のテニスをきちっとできれば勝てるだろうな」と思いつつも「フェデラーと当たることを考えてはダメだ」と言い聞かせていました(笑)対戦が決まった後は「どこのラウンド、どこのコートに入るんだろう?」とワクワクしていました。

ーーー「うわぁ、フェデラーと当たってしまう!」ではなく、「当たるのが楽しみ!」というワクワク感だったのですね。

もちろんです!ただ、あの頃のフェデラーはトップ選手相手でも、相性が良ければ本当に余裕を見せていた時代だったので、そんな中、自分がどこまでできるのか?不安はありました。正直、彼のスピード・パワー・多彩な戦術に他の選手がなかなか追いついていない状態で、唯一クレーコートではナダルがフェデラーを封じ込めることができる存在でしたが、グラスコート・ハードコートになるとひっくり返るという感じの状況でしたからね。

ーーー実際にフェデラーと対戦することとなり、直前の時の気持ちを教えてください。ワクワクしていました?それともその時はまた違った感情だったのでしょうか?

ナイトセッションに決まったという時点で、昼間に時間がすごく空いていて、過ごし方が非常に難しかったんですよね。トップ選手にとってはナイトセッションというのは慣れていることだと思うんですけど、僕にとってはそうではなく、ワクワクするけどエネルギーはあんまり使いたくないし・・・試合までどうしたらいいのか?色々悩みました。

でも試合に入って行く時にはもう「自分のテニスをするしかない」っていう気持ちでいました。これが僕にとって唯一の支えでしたね。自分のこともそうですけど、観客だったり、「これ多分世界中に映されるんだろうな」ってことだったり、そっちの心配までしてしまって(笑)「早く終わるのはまずいぞ、絶対に。一時間足らずで終わるわけにはいかない」と・・・それくらいあの時のフェデラーは強かったんです。

トップ10でも下手すれば一方的に試合が進むことがあったので、「自分が観客を満足させられるのかな?」という不安な部分がありました。その答えが「自分のテニスをするしかない」と。攻撃的にいってそれがどう通じるのか?試してみようと思いました。助けられたのは、オーストラリアの観客は、これまでの選手たちにネットプレーヤーが多い国でもあり、よくわかっているのでネットプレーで楽しんでもらえるんじゃないか?という予想をしていました。

僕が(ネットにでて)抜かれようが決めようが、最初でうまく観客の気持ちを掴むことができれば自分も乗るだろうし、あわよくばブレイクできたり、セットとれたりするかなぁ?くらいの気持ちでした。

ーーーフェデラーに対してこういう作戦でいこう、というよりも自分のテニスをしっかりしていこうという方向性だったのですね。

そうですね。作戦をたてたところで、シミュレーションしても最後には絶対やられるんで(笑)「こういうサーブ打って、こうやって・・・ここにアプローチして・・・」と考えても今までのフェデラーの色んな試合を見ているし、「こういう風に抜かれるんだろうな」っていう想像がついちゃうんですよね。自分が30位か40位くらいの選手だったらある程度術はあるだろうけど、フェデラーとやったこともないので・・・

とにかくどれだけ自分のテニスを出せるか?最初にリズムを掴むことが重要だと思っていました。

ーーー全豪のお客さんはどんな雰囲気でしたか?

ほとんどの観客が僕のことを知らないし、僕のプレースタイルや経緯も全く知らない中で見ているので、僕が繰り出すネットプレーに対してすごく楽しんでくれたなっていう印象ですね。驚いた方ももちろんいるだろうけど、喜んでいただけたんだなと思いました。あの時は29歳でしたけど、アジア系は若く見られるというのもありますから「あ、こんな子もいるのね」という感じだったと思います(笑)

〈ジャパンオープン〉

ーーー翌年のジャパンオープンでは見事フェデラーから1セットとりましたよね!!私も何度も動画観ました。あの時は作戦があったのですか?

僕にとって優位な部分は有明でできるというところと、ボールは僕が小さい頃から使っているダンロップフォートのボールだったというところです。全豪やその他のツアーなどフェデラーがいつも戦っているコートよりもサーフェスが速いということ、そしてボールが僕にマッチしているというのが良い点でした。あと一番大きいのは5セットマッチではなく3セットマッチということです。5セットよりは明らかに3セットの方が勝つ確率は高いので、戦う前から「勝つならばここしかないだろう」っていう気持ちでした。

ーーーやはり3セットマッチということは重要だったのですね?

はい、もうフェデラー相手に3セットとることは不可能です。トップ10の選手から3セット取る間にこっちが体力的な面などガス欠になっていってしまうんです。相手のほうが5セットマッチだと明らかに慣れていますし、そういう意味で3セットマッチだと可能性があると思いました。

そのためにはもちろんファーストセットを取ることが条件であって、それがうまくいったんですけど、彼は落ち着いているしグランドスラムのフェデラーよりは戦力がちょっと落ちているというか、調整しきれていないっていうのも事実だと思います。

これは彼だけじゃなくて、トップの選手たちはグランドスラムで勝つために調整しているので、彼らにツアーで勝つのとグランドスラムで勝つのは一緒じゃないですね。

ーーー1セットとった時の気持ちはどうでしたか?

嬉しかったです!フェデラーが乗り切れていなくて、こっちが先手先手でうまくいっているし、体力的には問題ない状況でしたので。もちろん危ない場面はありながらもキープもできていたし、何より先にブレイクもできていました。サーフェスの速さが助けてくれているし、観客の応援もファーストセットはかなり僕のほうに「フェデラーに対してどのくらいできるの?」みたいな感じで応援があったので、そういう意味では後押しされました。ただ、セカンドセットからすごく不思議な雰囲気に僕は感じたんですよね。

「え、このまま勝つの?」みたいな。日本でやっているから僕を応援してくれているファンの方も絶対いたと思うんですけど、でも中立の立場だったり、あとはフェデラーファンがいることも知っていたので、その方々が「フェデラーがここで負けては困る!」と思っているのが伝わってきて・・・(笑)

ーーーもっとフェデラー見たいよ、というファンの方の雰囲気を感じてしまったということですか?

そうそう(笑)純粋に僕が一観客だとしたら、フェデラーが負けてしまうということを望まないもんね。世界ナンバーワンである選手をもっともっと見たいっていう思いと、僕に頑張って欲しいという思いと、何度も観客の雰囲気が変わっていったのを僕はなんとなく拍手の感じだったりで戦いながら感じていました。

ーーーそういった観客の方の反応はプレッシャーに感じましたか?

プレッシャーではなかったんだけど、うーん・・・「まぁ、そりゃそうだよね」っていう感じ(笑)でもそんなのは勝敗に関わることではなく、僕が勝たせたとか手を抜いたわけでは一切ないし、そのようなことができるような相手ではないけれど、「とにかく自分のベストなプレーをするしかない」という気持ちで続けました。

ーーーセカンドセットもかなり惜しかったですが、ファイナルはタイブレークまで行きました!その時の気持ちや、フェデラーの印象を教えてください。

ファーストとった時点で、勝つのであればセカンドセットで仕留めるしかないだろうと考えていました。時間が経てば経つほどこっちが不利になるだろうと僕もなんとなく予想していて、セカンドの時に「ブレイクするのは無理だな」と途中から感じていたのでセカンドはタイブレークに持っていって、フェデラーに後がない状況を作って「これで取られたら負けてしまうんだ」というプレッシャーをかけたいと思っていました。

でも、結果的には第12ゲームをブレイクされてしまってこちらの勝つためのプランが崩れちゃったんですよね。そこからはもういっぱいいっぱいです。ファイナルセットはタイブレークになんとか漕ぎ着けたっていう感じでした。フェデラーのサービスゲームでは一度もデュースはないし、良くて30-30なんですね。でも僕のサービスゲームは何度もデュースを繰り返す場面が多くなって、ブレイクポイントこそファイナルセットは握られなかったんですけど、もう体力的にも精神的にもギリギリのところで、ちょっとした運をこっちが手繰り寄せたりしてなんとかタイブレークに行ったと戦いながらも思っていました。

その頃には観客も「行けるところまで行け」といったような感じで・・・フェデラーか完全に優勢なんだけれど、なんとかついていっているというのが僕の立場でした。

〈フェデラーを共有できた最高の瞬間〉

ーーーフェデラーと試合をして何か印象的だったエピソードはありますか?

ジャパンオープン当日は雨で外でのウォームアップができなかったんです。僕ら2人とも朝にやっていないので、そういう場合は5分追加で合計10分間のエキストラウォームアップができるっていうルールがあるのを知っていました。

だからレフェリーのところにいって「使えるよね?」と聞いたら「もちろん試合前10分間できるよ。じゃあロジャーに聞いてくるね」と言われて僕もレフェリーの後をついていったんですよ。「スズキが10分間ウォームアップしたいっていってるけどロジャーどうする?」っていうのを聞いたら、僕は「もちろんやろうよ!10分あった方がいいよ」っていうと思ったんです。でも返ってきた答えは「どっちでもいいよ!」で・・・(笑)「え?え?そういう感じなの!?」となりました。

フェデラーにとってのツアーの準々決勝はそんな感じなのだなぁと。2人ともストレッチとかはしていたけれどその日はじめてボールを打つので、ゆっくりウォームアップが始まるんですよ。その瞬間がもう最高のボールのやりとりでした。観客はほとんどフルにはいった状態で、エキストラのウォームアップをもらって、ゆっくり世界最高の選手とコロシアムでテニスができるという・・・唯一の時間でした。後にも先にもこれ以上の贅沢な時間はなかったなと思います。

ーーー試合で打ち合っている瞬間とは全くの別物だったわけですね。

全く違いますね。もうお互いに本当に良い力加減と良いスピードとで・・・観客がいるから適当なこともできないし、10分後には試合なのでボールの感触をしっかりとたしかめていました。試合モードだけれども、すごくゆっくり時間が流れていたんですよね。フェデラーがあの時「やらないよ」とか言ったらどうしようかと思ったけれど、できて良かったです(笑)

〈全豪への意気込み〉

ーーー最後に今年の全豪オープンは現地に行かれるということで、意気込みを教えてください。

予選出るぞーー!!とかじゃなくて?(笑)日焼けしすぎないように気をつけます。現地から色々なことをお伝えできたらと思うので、なんでもできるように色んなことを備えておきます!

ユーモアたっぷりに意気込みを語ってくれた鈴木さん。現地からのホットな情報お待ちしております!楽しみな全豪オープン2023、本戦は1月16日に開幕するので皆さん一緒に満喫しましょう。

(川又智菜美)

※写真はロジャー・フェデラー(左)と鈴木貴男(右)
(Photo by Getty Images)

鈴木貴男が全豪オープンテニス2023の舞台裏をお届けいたします。
2023年1月15日(日)17時~
WOWOW テニス公式インスタアカウントにてインスタライブ実施いたします。お楽しみに!

川又智菜美

川又智菜美

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WOWOWアナウンサー。慶応大学出身、テニスが大好きなアナウンサーです。
【@w_tennisworld】でテニスについて #ちなみにテニ活 でつぶやきます!

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