ニュース News

「テニスは楽しんだ者勝ち」岡山学芸館高校シングルス3の重責を担った岸本聖奈が、その心境に辿り着いた理由

岸本聖奈

「シングルス3って、微妙な立場です」

 全国選抜高校テニスの出場をかけた地域予選に、岡山学芸館高校のシングルス3として戦った岸本聖奈は、複雑だった心境を話してくれた。シングルス3本、ダブルス2本で戦う団体戦において、試合順の最後となるこの1本は、それまでに勝敗が決まれば試合すらせずに終わることもあるが、2勝2敗で回ってきた際の責任は大きい。

その場面は中国選抜高校テニス大会の準決勝、野田学園との戦いで訪れる。岸本はその重責を見事に果たし、決勝への切符を手に入れた。当時の心境をこう語る。

 「学校の看板を背負っているから本当に大丈夫かなとか、自分が負けたら負けちゃうんだなとか、不安要素はいっぱいあったのですが、コートに立ったら、勝たないといけないという思いより、楽しい方が大きかったです」

仲間や保護者たちが見守る中、自分が勝ったらヒロインになれる、そんなことを想像しながら戦っていたら、楽しくなり、勝利に結びついたという。

「結局、テニスは楽しんだ者勝ちだなと思いました。考えすぎて、体がこわばって、いいプレーができずに後悔するのなら、怖がらずに楽しんじゃおうって」

岸本は2022年4月、生まれ育った福岡を離れ、進学のために岡山へ渡った。最初は親元から離れた寂しさでホームシックにかかり、毎日泣いて過ごしていたという。その心理面はテニスにも影響していた。ミスが増えると下を向くことが多く、怖がって消極的になり負けることがあったという。

そんな中、岸本が影響を受けたというのは、大坂なおみの試合だった。

「試合を見ていたら、大坂選手は苦しい場面でもわざと笑顔を作っていました。自分もそうやって笑ってみたら、気持ちも少し晴れて、いいプレーができたんです。だから団体戦の時は、ずっと笑顔でいようって決めていました」

また、2期生として参加している『リポビタン Presents伊達公子×YONEX PROJECT』のキャンプで伊達に言われた「ミスをして落ち込んでいるより、ファイトしなければいけない」という言葉も、岸本を勇気づけた。それが11月〜12月にかけて行われた「岐阜国際ジュニアテニストーナメント2022 Supported by KIMIKO DATE × YONEX PROJECT」(ITFジュニア大会)でのダブルス準優勝という結果にもつながった。

「ITFジュニアに出られる機会は少ないので、出られる大会で全力を尽くしたいし、部活みたいに楽しくやろうという思いで戦いました」と、終始笑顔で戦い続けた。

古谷ひなた(左)岸本聖奈(右)

同じプロジェクトのメンバーで、岐阜でダブルスのペアを組んだ古谷ひなたは、通信制の高校を選択し、国内外のITFジュニアを精力的に回っている。学校の部活がメインの岸本だが、そこに焦りやもどかしさは感じてはいないという。

「自分の中ではまずは高校のテニス、団体戦です。全国優勝はチームとして絶対に成し遂げたいことの一つです。学校テニスで強くなって、団体でも個人でも一番になりたい。そしてITFジュニアは少ないチャンスでしっかり結果を出して、もちろんグランドスラムジュニアを目指します」

シングルス3としての重責、そしてITFジュニアの結果が、岸本をひと回り大きくさせた。心細くて泣いていた自分は、もういない。


(保坂明美)
写真:ヨネックス

【リポビタンPresents 伊達公子×YONEX PROJECT ~Go for the GRAND SLAM~】
日本テニス界のレジェンドである伊達公子氏とヨネックスがともに取り組む女子トップジュニア育成プロジェクト。2019年に発足し、1期生4名は2年間の活動を経て卒業しています。2021年4月から第2期生8名が活動中。

「女子テニス未来応援プロジェクト~Go for the GRAND SLAM~」特設ページはこちら
SNSでも情報発信中!アカウントはこちら▶@w_tennisworld

保坂明美

保坂明美

facebook twitter Instagram

テニス雑誌「スマッシュ」の編集長を13年間務める。現在は独立し、WEBサイト「Tennis.jp」の管理や、テニスの技術解説企画、選手関連記事の執筆、本の編集、大会の広報業務などを手がけている。

  1. Home
  2. ニュース
  3. 「テニスは楽しんだ者勝ち」岡山学芸館高校シングルス3の重責を担った岸本聖奈が、その心境に辿り着いた理由