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鈴木貴男がフェデラー引退を語る 最後の舞台にレーバーカップを選んだ理由とは

2005年全豪オープンでのロジャー・フェデラー

私、テニスが大好きなWOWOWアナウンサー川又智菜美が、レジェンドである鈴木貴男さんにインタビューを敢行。フェデラーと対戦した経験もある鈴木さんにフェデラーの引退について、そして昨年のご自身の引退についても振り返っていただきました。

〈ロジャー・フェデラーの引退について・・・〉

ーーーフェデラー引退の一報を聞いた時、率直にどう思われましたか?

まずは、膝の事が本当に難しいんだろうな、とその瞬間思いました。なかなか(膝の状態が)難しいというのは感じ取っていて、「もしかしたらこのまま戻れないかも」と、一ファンとして心の準備はしていました。引退をするっていう決断を知った時は、残念な思いもあったけれど「やっぱりそうなんだよな、膝が動かせなくなるっていうのが、一番今のテニスをやり続けられない、もしくは勝ちづらくなると。いくらフェデラーでもこうなるんだな」と色んな気持ちがでてきましたね。

ーーーたしかに引退の予感はありましたね・・・今回フェデラーはレーバーカップでの引退を選択しました。私個人としては、最後はウィンブルドンのあの芝の上を選ぶのかな?それとも故郷バーゼルかな?とも思っていたのですが、どちらも叶いませんでした。レーバーカップを選んだことについて、鈴木さんの印象を教えてください。

時間が経てば経つほどプレーをすることが難しくなるんだなと。時間さえあれば治る怪我ではないのだと思いましたね。来年のウィンブルドン、全豪、もしくは今年レーバーカップ後にあったバーゼルといった、いわゆる本番の試合をやれるほどの状態ではないのだとすぐ思いました。だからこそ彼は引退を決めたのだと感じました。実際にレーバーカップをみていると、あまりにもすごいテクニックとすごいボール感覚を持っているので一見「え、できるでしょ?」と時折思わされるんですよ。でも実際に本当に復活していくことを考えると、足元が非常に不安定な状態でシングルスとなるととても大変で、その中で5セットマッチをやらなくてはいけないグランドスラムと思うと「そこ(シングルスでの戦いや5セットマッチの試合)にはもう彼は戻らない」ということでの決断なんだろうなと思いましたね。

ーーーたしかにエキシビションであるレーバーカップでもダブルスでしたね。

多分、ダブルスでギリギリだったと思います。フェデラーとしては、少しでも悪い状態は見せたくない、でも時間をかけたとしてもそれが良い状態になるわけではない。だったらジョコビッチやナダルがいて、世界が注目していて、フェデラーも発起人のトップ選手の1人として出場し続けたレーバーカップ、という判断をしたのでしょうね。あとは、グランドスラムとは違い、どの試合にでる・誰と組む・何日目のこれが良いといったリクエストをできるのは唯一レーバーカップだけだと思うので、最後の試合という意味では一番良かったんじゃないでしょうか。

ーーーお話を聞いていて私も納得しました。ナダルとのダブルスで終えるというのもレーバーカップならではだったかもしれないですね。

シングルスだったら、下手したら一方的にやられちゃっている可能性もありますよね。エキシビションとはいえ、レーバーカップは皆真剣じゃないですか。「エキシビションなのになんで?」って途中思っちゃうくらい(笑)試合してる選手たちだけじゃなくて、ベンチにいる選手も異常なくらい自分たちのチームを応援するし、真剣にアドバイスしたり、真剣に怒ったりもする。「この人たち、気持ちが入ると大会のレベルやどこでやっているかというのはあんまり関係ないんだな」と思いますね。レーバーカップはそういう気持ちが入る大会だから彼が選んだんじゃないかと。

ーーー鈴木さんから見て、この幕引きはフェデラーにとって良いものだったな、ということですね。

はい、そうですね。最後、勝って終われるならと誰もが思っていたと思いますが、フェデラーからしたら最後に試合ができたことで満足じゃないですかね?それくらい膝も、そしてテニスの状態も良くなかったと思いますよ。その中でなんとかプレーをして、セレモニーもしてという状態だったので、良かったと思います。

〈鈴木貴男さんご自身の引退について・・・〉

ーーー昨年、鈴木さんご自身も引退を決意されましたね。

僕のは何かちょっと変な間がありましたけどね(笑)自分の中でも「やってるって言えるか?う〜ん、どっちだ?」みたいな。「引退は別にする必要はないでしょう」と言っていたのですが、一区切りつけるために引退をしようと思って・・・いまだに不思議ですね。試合は出ていないけれど、あまり生活は変わっていない。試合に出るためのことはやっていないけれど、熱量は別に変わらないですし、変えられないです(笑)

ーーーテニスは変わらず大好きっていうことですよね?(笑)

変わらずですね(笑)最近のストレスは、選手の時は全部自分のために好きなように練習をして好きなように試合をしていたんですけれど、それがもうできなくなってしまったこと。コーチングもそうですけど、撮影やイベントをやった時も相手がメインになってくるので自分がやりたいことを抑えなきゃいけないっていう・・・

ーーーなぜ、昨年のタイミングで一区切りをつけようと思われたんですか?

コロナ禍の状態もちょっと関係していたし、あとは一週間を通して試合ができなくなってしまったということです。大会に備えて調整する時間がどんどん長くなっていって、2・3日練習して「よし、行くぞ」という訳にもいかなくなりました。一つの大会に出るために2・3週間かけて調整をして、途中で怪我をしてしまって「またこのあと何週間もできないの?」というようなことを最後の方は繰り返していて・・・こんな状況だと選手としてやっていくのは難しいなと思いました。

調整をして一つの大会に向かって行くということは非常に楽しいんですけど、その期間があまりにも長いし、長い割に試合をやると身体が脆い。若い選手とやっていると「1セットに1人の鈴木貴男がほしい」みたいな(笑)そのくらいしないと、試合にならなくなってきちゃったので・・・そういうところですね。

ーーーでは、そういう意味でいうと、選手としてフェデラーの最後は理解できる?

わかりますね。多分、短い時間のパフォーマンスでいうと、今のトップ選手と彼は変わらないと思います。ただ連戦であったり、もしくはグランドスラムで2週目にいくことを考えると4試合は戦わなくてはいけないので、それを「できない」と感じたんでしょうね。

〈2022年に引退した選手たちについて・・・〉

ーーー今年は引退した選手が数多くいました。鈴木さんの中で驚いた選手はいらっしゃいますか?

シモンですね。引退を発表した時に驚くっていうよりも、どういう終わり方するんだろうな?という方にすごく興味がありました。シモン、ロレックス・パリ・マスターズですごく頑張ってたじゃないですか。個人的に、辞めるのわかっててあれだけ頑張れることがすごいなと思いました。そして、なおかつフランスの観客が後押しするあの応援も印象に残っています。

ーーーたしかにあのファイト、精神力で持っていっている感じはグッときましたね。

そう。もう、絶対身体はボロボロだろうに、あ、なんとかなるのねという(笑)それに驚いてました。だからいつの間にかシモンを応援してたけど、さすがに最後は身体が無理だよね、という感じでしたね。

フェデラー、シモン、ツォンガ・・・この3人は幸いにも戦った経験があって、それから下の世代になると対戦をした経験のある選手がほとんどいないので、その3人が「一つの時代なんだな」っていうのは感じましたね。

ーーーそういった選手が引退してしまったことについて寂しさはありましたか?

やっぱり寂しさはありましたね。テニスを見れば、長い時間はできないとしてもそれなりに良いプレーをまだできるので、その中でどう引退するのか?判断が難しかったと思います。僕自身もレベルは違うといえど難しく感じていたので、うーん・・・すっきり辞められる人羨ましいなってずっと思います(笑)何がすっきりかわからないですけど、色んな葛藤があって辞めるだろうし、辞める理由はたった一つじゃないでしょうしね。僕は個人的に、シモンは終わり方がすごいかっこいいというか良かったと思います。全てを出し切って「誰か骨は拾っといてね」みたいな(笑)それがフランスの若手の選手や同僚に通じるものがあって、最後のセレモニーに色んな選手が見にきたり、コートに呼ばれたりしてすごく良い雰囲気だなと思いました。僕は海外での引退セレモニーがすごくかっこいいと思っていて、引退を悲しむというよりも、素晴らしい実績だったよね、素晴らしい選手だったよね、という方に目を向けてくれるので良いなと思っています。


【編集後記】

2022年を振り返ると、なんだか引退ラッシュだったように感じます。フェデラーやセレナ・ウイリアムズといった、”レジェンド”と呼ばれる選手たちがコートを去り、シモンやツォンガといった一時代を支えてきた選手もまた決意を固めました。鈴木さんがおっしゃったように一つの時代の終わりを予感するとともに、史上最年少(19歳)で年間1位となったアルカラスのような存在が新たな大きな時代の芽吹きを感じさせます。
女子に関しても、年間1位は今年37連勝の快進撃を披露した20歳のシフィオンテクです。ただ、まだまだレジェンドたちも負けてはいません。年間2位につけているのはナダルですし、ジョコビッチはコロナのワクチン問題で欠場した大会があるにも関わらず年間5位につけています。試合をみていても「まだまだ自分たちの時代を終わらせてたまるか」といったような意地を感じると、観ているこちらも熱くなります。時代の狭間とも言える現在、来年はどのような戦いになっていくのか?今から待ち遠しいです。

(川又智菜美)

※写真:Getty Images

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川又智菜美

川又智菜美

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WOWOWアナウンサー。慶応大学出身、テニスが大好きなアナウンサーです。
【@w_tennisworld】でテニスについて #ちなみにテニ活 でつぶやきます!

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