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ルードが全米の頂点に立つための3つのカギはリターン、試合環境、そして自信

写真は「全米オープン」でのルード

ラファエル・ナダル(スペイン)を抜いて1位になるのはキャスパー・ルード(ノルウェー)か、カルロス・アルカラス(スペイン)か。両者がナンバーワンになるためには決勝進出が条件だ。そろって決勝進出となったら、優勝者がトロフィーと1位の座を同時に手に入れる。準々決勝ではルードが快勝、アルカラスはヤニク・シナー(イタリア)との死闘を制し、いよいよ決勝での一騎打ちかと期待がふくらむ。

ルードの躍進のカギは、ハードコートを制したことにある。今季は全仏で四大大会の決勝に初めて進出した。クレーコートはもともと得意で、ツアー優勝9回のうち8大会がクレー。ハードコートでの優勝は一度だけで、昨年のサンディエゴの大会だ。ルードと言えばクレーというイメージがあったが、ハードコートのATPツアー マスターズ1000 マイアミで今年、準優勝。決勝でアルカラスに敗れたが、準々決勝ではアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を倒している。

ルードは「ここ1、2年でハードコートのプレーが上達したと思う。マイアミでは、ハードコートの大きな大会でもいい選手を倒して勝ち上がれることを証明できた。これは自信になった」と話す。
 サーフェスごとの勝敗を見ると、クレーコートでは通算99勝37敗で勝率72.8%、ハードコートは60勝43敗で勝率58.3%と、大きな開きがある。ただ、今シーズンに限ればハードコートで17勝6敗、勝率73.9%とクレーでの通算勝率をも上回り、苦手にしていたハードコートを克服したことが見てとれる(数字は今大会の5試合を含む)。

父親でコーチのクリスチャン・ルードは息子キャスパーのハードコートのプレーについてこう話している。
「ノルウェーでは基本的に夏の間はクレーコートでプレーすることが多く、彼のプレースタイルはクレーにより適している。最初はランキングを上げたかったからクレーのチャレンジャーに出ることが多かったが、早くトップ100に入って大きな大会に出たいと思うあまり、クレーの大会でプレーしすぎたかもしれない。冬の間は(屋内)ハードコートでプレーしているので、ハードコートでプレーできないということはない。プレーすればするほど自信がつく。特に大きな大会で、いい選手と対戦し、少しずつ自信をつけていくことが必要だ。単に自信の問題だと思っている」
ルード自身、ハードコートでのプレーが嫌いではないという。

「1年のうち6カ月はクレー、6カ月は屋内ハードコートでプレーしていた。だから、ハードコートでのプレーを楽しんでいないというわけでもないし、どうプレーしたらいいかわからないというのでもない。クレーで気分よくプレーできているからといって、ハードコートが嫌いだとか、この大会で結果を出せないということにはならないよ」

必要なのは自信、この点でコーチと選手は意識を共有している。ルードはラファエル・ナダル(スペイン)やドミニク・ティーム(オーストリア)が全米で活躍したことを引き合いに出したが、そのことも自信の裏付けにしたいようだ。
ルードのプレーは、フォアハンドの重いストロークと強靱なフィジカルを生かし、ベースラインで粘ってチャンスを待つ形が基本だ。クレーで土台作りをした選手の典型的なスタイルだ。この展開に持ち込むために、リターン時に極端にベースラインから離れ、後方に構えることが多い。全仏では、このスペースを使い、持ち前のベースラインプレーを存分に展開した。

特徴的なリターンポジションは全米でも見られる。全仏オープンのセンターコート、フィリップ・シャトリエにはベースライン後方に広いスペースがあるが、全米オープンのアーサー・アッシュ・スタジアムも同様で、ルードはテレビ画面からはみ出すくらい後ろに構え、力強いリターン、深いリターンでサーバーの優位を打ち消す。また、ときには少し前に構えることもある。守備的に、あるいは攻撃的に、とリターンにメリハリをつけるのだ。さらに、優勢を察知した瞬間、ポジションを上げて攻め立てる。クレーコートのスタイルを土台に、ハードコート用に合わせて攻撃的に微調整し、成功している。
「このコート(アーサー・アッシュ・スタジアム)はベースラインの後ろにスペースがあり、深いリターンを打つことができる。助かるよ」と、ルードは「世界一大きい」センターコートに感謝した。

準々決勝ではビッグサーバーのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)と当たったが、相手のセカンドサーブ時のポイント獲得率は54%に達し、3セットで5度のサービスブレークに結びつけた。相手のサービスゲームをブレークしたのは全米の5試合で29回にのぼる。
準々決勝ではルードに有利な材料がもう一つあった。この時期のニューヨークは時々、湿度の高い日がある。ベレッティーニ戦のあとでルードはこう話した。
「湿度が高く、(開閉式の)屋根を閉めたコンディションは僕に少し有利に働いたと思う。そのせいで球足が少し遅く感じられた。これまでに彼と対戦したときと比べ、時間があるように感じた。僕には有利だったよ」
父親のクリスチャン・ルードも「コートが少し遅くなった」と口をそろえる。準々決勝は球足の遅いクレーが得意なルードには願ってもない試合環境だったのだ。

こうして見ていくと、この先、ルードが決勝進出、さらに優勝へと突き進むためのカギが見えてくる。1つはリターンのポジショニングと攻勢に転じるタイミングだ。そして、湿度などの試合環境。さらに、一番必要なのが自信だろう。ハードコートでもできる、この自信が揺るがなければ、優勝トロフィーとナンバーワンの栄誉を手にする可能性が高くなる。

(秋山英宏)
※写真は「全米オープン」でのルード
(Photo by Frey/TPN/Getty Images)

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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