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番狂わせの主役は今度もコルネ。成熟したテニスで前年女王ラドゥカヌを下す

2022年全米オープンのコルネ

ウィンブルドンの3回戦でイガ・シフィオンテク(ポーランド)の連勝を37で止めたアリゼ・コルネ(フランス)は、試合後のオンコート・インタビューでもベテランの貫禄を見せ、観客を沸かせた。「私は良いワインみたいなもの。フランスでは、良いワインは熟成されて、もっとおいしくなる」。テニス名言集を編むなら載せたくなるような、印象的なコメントだった。

2022年ウィンブルドンでのシフィオンテク

そのコルネが、全米の1回戦でもディフェンディングチャンピオンのエマ・ラドゥカヌ(イギリス)を破る殊勲を立てた。20年、22年の全仏女王シフィオンテクに続く大物食いだ。今季、トップ20選手から奪った白星はこれで6つとなった。

今年、コルネが倒した四大大会優勝経験者はこの二人だけではない。全豪でガルビネ・ムグルッサ(スペイン)とシモナ・ハレプ(ルーマニア)を破り、全仏ではエレナ・オスタペンコ(ラトビア)に勝っている。グランドスラム4大会で毎回、元女王を倒したのは驚きだ。感想を聞かれたコルネは「すごくクール」と表情を崩した。

「クレイジーだと思う。ちょっとクールね。下から見上げていた選手、長い間追いかけてきた選手たちに四大大会で勝てるなんて……。こんなことができるとは思ってもみなかったので」

コルネは1990年生まれの32歳。今年は、全豪で初めて四大大会の準々決勝に進出した。四大大会本戦初出場は05年全仏。そこから63大会目で初めて手にした「8強入り」だった。

ウィンブルドンで杉山愛さんが持っていたグランドスラム連続出場の最長記録62大会に並ぶと、全米で63大会連続として、単独トップに立った。その記念すべき大会で前年女王を倒したのだ。「星が一直線に並んだような感じ」とその感想を表現した。

この試合で効果的だったのはネットプレー。16回ネットに出て、奪ったポイントは14。また、9本を超えるロングラリーでの得失点は23対12と相手を大きく上回った。

「いいテニスができたと思う。バリエーションをつけ、ネットに出られるときは出ていって、他に選択肢がないときにはディフェンスをした」

思い通りのプレーができなければ、次善の策を探った。ラドゥカヌの攻撃をしのぎ、粘って粘って、ものにしたポイントも多かった。相手のミスにも助けられた。6-3,6-3はスコアだけ見れば快勝だが、内容は辛勝に近い。序盤から汗が肌に光り、肩で息をする場面もあった。一打ごとに声を発する姿も見られた。「どの試合でも、どのセットでも、どのポイントでも100%で臨んでいる」の言葉通りのプレーだった。

2022年全米オープンのラドゥカヌ

ベテランらしい洗練されたプレーというより、むしろ泥臭くポイントを重ねた印象もある。いや、洗練も泥臭さも、果敢な攻めもしぶとさも、すべてひっくるめたものが今のコルネのテニスなのだろう。まさしく熟成されたワインの味だ。新酒の単調な味わいではなく、旨味が複雑に入り交じった芳醇さを持っている。

今季、学んだことは「成熟」だという。

「自分の感情をうまくコントロールできるようになったと思う。年をとって、より成熟したのでしょう。それが結果にも表れている。私は32歳。少し遅かったとしても、できないよりはまし」

こんな言葉にもベテランの自信と誇りが込められている。

全豪では、来年の全仏を最後に現役を引退する可能性を明かした。だが、この全米では引退の時期について明言せず、「その時が来くれば、自分の心で感じることでしょう」と語った。「今は心も体も健康であることを楽しんでいる」という。

大物食いの興奮をもっと味わわせてほしい、芳醇なワインのような熟練のプレーをもう少し見ていたい、そう思わせるベテランの奮闘だった。

(秋山英宏)

 ※アイキャッチ写真:2022年全米オープンのコルネ(Photo by Julian Finney/Getty Images)
※記事中写真1枚目:2022年ウィンブルドンでのシフィオンテク(Photo by Shaun Botterill/Getty Images)
※記事中写真2枚目:2022年全米オープンのラドゥカヌ(Photo by Elsa/Getty Images)

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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