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錦織、大坂の1戦も…全米で印象に残った試合ランキング<#ちなみにテニ活>

2014年全米オープンテニス準決勝でジョコビッチに勝利した錦織選手

8月29日より開幕した2022年の全米オープンテニス。テニス大好きな私、WOWOWアナウンサー川又智菜美が古巣の大先輩であり、テニス実況でおなじみの鍋島昭茂アナウンサーにインタビューしました。

「基本的にテニスツアーは夏を追いかけるスポーツだけど、全米だけは晩夏から初秋と季節の移ろいを感じる瞬間がある。満身創痍でシーズン終盤に向かっていく選手たちの姿と相まって哀愁を感じるところが好き」と全米についてのイメージを語ってくださった鍋島さん。
今回は2003年から長く全米を実況されている鍋島さんに、印象に残っている試合4選を伺いました。一年で最後のグランドスラムである全米オープン…シーズン終盤に向けて駆け抜けていく選手たちの思い出を鍋島さんと共に振り返っていきましょう。

4位 2012年男子シングルス 4回戦 フアン マルティン・デル ポトロ vs アンディ・ロディック

この試合は、ロディックの現役最後となった試合です。鍋島さんは「ロディックはフェデラーの一個下で、フェデラーが同じ時代にいなかったらいくつウィンブルドンや全米のタイトルをとっているんだろう?というくらいすごい人」と評していました。私自身この時まだテニス観戦と出会っていなかったのですが、フェデラー世代の素晴らしい選手という印象があります。

そんなロディック、2012年全米当時はまだ30歳。開幕前は引退する雰囲気はなかったそうですが、一回戦を勝利した後に突然引退表明をしました。ロディックの中では全米を最後の大会にすると決めていたそうです。その後、2回戦トミック、3回戦フォニーニをくだし迎えたデル ポトロ戦、鍋島さんは強烈に印象に残っているあるシーンについてお話してくれました。

試合の流れとしては、第一セットはロディックがタイブレークの末とるのですが、第二セットからはデル ポトロの流れに…そんな中、ロディックの最後のサービスゲームを迎えます。この時かなり危うくブレイクされそうだったのですが、ロディックは追い詰められてから底力を見せ神懸かったサービスゲームを行います。鍋島さんは、「ロディックはビックサーバーなので自分のサービスゲームでは終われないというプライドがあったのではないか?」と回想していました。若い時よりも速いサーブを打っているんじゃないか?と思うくらいのサーブを連続して打っていったということです。

そうして最後サービスゲームをキープした時…

ロディックはポケットに入っていたスペアボールをコートに叩きつけ、一瞬ふと振り返って目頭をおさえました。「陣営席もその瞬間皆泣いていてエモーショナルな時間だった」と鍋島さんは話しながら、「あの時のロディックの姿が今でも目に焼き付いている」と教えてくれました。

これは私の推測の域を出ませんが、ロディックは最後のサービスゲームで一球一球のサーブにその時彼が持てる全てを込めていたのではないでしょうか。鍋島さんがおっしゃったように、現役最後の試合を自分の得意なサービスゲームで終えるわけにはいかないと打ってきて、キープできた瞬間に思いが溢れたと思うと胸にぐっとくるものがありますね。

3位 2015年 女子シングルス決勝 フラビア・ペンネッタ vs ロベルタ・ビンチ

この年の女子決勝は、当時33歳のペンネッタと当時32歳のビンチ、同年代の2人のイタリア対決となりました。2人は9歳からの知り合いだったそうです!当時ペンネッタは26位でビンチは43位ということもあり、大会前では予想のつかなかった決勝カードでした。(因みにビンチはこの時全米の4連覇、そして年間グランドスラムがかかっていたセレナ・ウィリアムズを準決勝でくだして勝ち上がっています!すごい!)鍋島さんは振り返りながら「今女子は戦国時代で誰が優勝してもおかしくないというけれど、この試合あたりからなんとなく決勝戦の予想がつかなくなったと思う」「去年の全米女子決勝はラドゥカヌ vs フェルナンデスという10代対決で、遡ってこの試合は30代対決。つい6年前は、と比較すると面白いと思うし先が読めないことを象徴するような試合だったと思う」とお話してくれました。

さて、こちらの試合、この理由以上に“印象に残る試合”となった出来事が試合後に起こります。なんと、決勝に勝利したペンネッタが優勝スピーチの中で今シーズン限りで引退すると発言したのです!

「優勝した選手が引退表明しちゃうなんてびっくりだった。長く実況していて、チャンピオンスピーチの中で引退表明なんてはじめてだったので印象に残っている」と鍋島さんは当時の驚きを教えてくれました。どうやら全米前のモントリオールの大会時点で引退の決心をしていて、親しい周りの人たちには話していたようですが、優勝してもその思いは変わらなかったということです。こうしてペンネッタは自身の引退に全米優勝という素晴らしい花を添えました。

2位 2018年 女子シングルス決勝 大坂なおみ vs セレナ・ウィリアムズ

大坂なおみグランドスラム初優勝となったこちらの試合、セレナに対する警告、観客のブーイングなど決勝の舞台を楽しみにしていた私たちにとって予想外の展開となりました。

私自身、テニスを好きになってまだグランドスラムの観戦をし始めたころだったのですが、テレビ越しに伝わってくる異様な雰囲気に圧倒され、大坂の優勝がとても嬉しいはずなのに彼女の気持ちを慮ると胸が締め付けられて涙が溢れたのを覚えています。試合はもちろん、鍋島さんの実況もとても印象的だったのでその時の思いも含めてお聞きしました。

この試合で最初の警告はセレナに対するコーチングバイオレーションでした。その後セレナがラケットを叩きつけて2回目の警告、ポイント・ペナルティー、審判に対する暴言によりゲーム・ペナルティーをそれぞれとられました。この時、終始セレナと審判が揉めていたので会場はブーイングの嵐。テレビ越しにもはっきり聞こえたブーイングですが、鍋島さんは実況中に自分の声と解説者の伊達さんの声が聞こえなくなり、ヘッドホンに入ってくる現地音をはじめて下げたそうです。「これはグランドスラム決勝戦の実況なんだ」と鍋島さんは何度も自分自身に言い聞かせ、とにかく試合を壊さないように気を張っていた記憶があるとお話してくださいました。また「我々が見たいのはセレナと大坂の素晴らしいプレーのはずなのに、なんで試合中何度もバイオレーションの説明をしなくてはならないのだろう?」と自分で腹立たしくも思ったそうです。

『グランドスラムでの決勝の舞台に立ち、対戦相手はセレナ・ウィリアムズ』

大坂にとっては子供の頃からの夢のシチュエーションのはずです。夢が叶った瞬間であったはずなのにあのような状況になり、鍋島さんは「早くこの異様な雰囲気から彼女を助け出してあげたい」という思いで実況していたそう。それ故、最後に画面の中に『大坂なおみ チャンピオンシップポイント』という文字がでた瞬間に「あと1ポイントで終わるんだ…!」と安堵の涙が溢れたそうです。その時の涙は、大坂が優勝するからではなく「一人の20歳のプレイヤーが懸命に戦い抜いてやっと苦しい時間から解放される」という思いからきたものだということでした。この時、放送席では伊達さんが鍋島さんの腕を横から力強く叩いて激励してくれたそうで、そのおかげでなんとか実況することができたと笑っておっしゃっていました。実況している鍋島さんもまた戦っていたのだと改めて尊敬の念がわいてきます。

セレナとしても、誰よりも強くあの大会で勝ちたいという思いの元戦って、主審のカルロス・ラモスさんも自分の信念に基づいてジャッジをし、大坂なおみは外野の声が大きい中で目の前の1ポイント1ポイントを戦い抜きました。たまたまあのような形になってしまったものの、誰が悪役ということはなく皆がそれぞれ信念をもってやったこと。鍋島さんは決勝後すぐに「早く今度はブーイングのない形で二人の試合をみたい」と思ったそうですよ。

1位 2014年 男子準決勝 錦織圭 vs ノバク・ジョコビッチ

「全米で鍋島といったらこれを一位にしなければ何を一位にするんだ?というカードです」と話し始めた鍋島さん。この時、錦織圭が決勝進出を決めた瞬間の映像と鍋島さんの声は今でもよく流れてきますね。

この試合のことについて話すにあたり、それまでの錦織の状況を振り返っていきましょう。当時の錦織は8月に右足の親指を手術していて、手術した時の情報として全治3週間とあり、もちろん前哨戦はキャンセル。全米自体も行くだけ行ってみて身体の状態次第では出場しないかもしれないという状況だったそうです。2014年の全米はそんな中の快進撃でした。

鍋島さんは4回戦から錦織の試合を担当したということなのですが、4回戦も準々決勝もとてもタフな試合になりました。4回戦のラオニッチ戦はナイトセッションだったのですがフルセットの戦いとなり試合時間は4時間19分、終わった時間はなんと午前2時26分だったそうです!2014年当時の全米において一番遅い時間に終わった試合となり、準々決勝まで一日空くものの疲労が心配されました。そして準々決勝のワウリンカ戦では、錦織の疲れを見越して長期戦に持っていこうとするワウリンカの作戦がみてとれたそう。準々決勝もフルセットとなり試合時間は4時間15分と長丁場に…これらのタフな戦いを勝ち抜いて迎えたのがジョコビッチとの準決勝だったのです。手術明けということ、そして長時間の戦いでの疲労が心配された中行われた試合でしたが、そこには鮮やかに戦う錦織の姿がありました。

錦織が中に踏み込みジョコビッチのサーブを叩いてリターンウィナーを決めるシーンが度々あり、そのリターンをみて鍋島さんは「世界一のリターンです」と自然と口にしていたそうです。また、この試合において錦織は甘いボールを自分から配給せず、ジョコビッチのバックのダウンザラインを徹底的に封じていたということでした。そういった二人のラリー戦をみて、解説の坂本さんが「ラリーの中でジョコビッチが精神にきていて(ボールを)入れにいっている」という表現をしたそうです。鍋島さんは、ストローカーとして天下一品のジョコビッチを相手にそういう試合運びを展開していったことがすごく鮮やかで今でも目に焼き付いているということでした。

また、先述したように午前2時26分に終わった試合もあり、選手としてはそのあとクールダウンがあって、メディアへの対応もあって…とすぐに眠れるわけでもありません。そんな中戦い抜いたことを考えると鍋島さんとしては胸が締め付けられるような思いだったそうです。
「僕らメディアも夢をみているようなセカンドウィークの一週間だった」とおっしゃっていました。

いかがでしたでしょうか?
やはりグランドスラムではドラマが生まれるものなのだなぁと思いました。
今年はどんな試合が行われていくのか?一試合一試合一緒に楽しんでいきましょう!

(川又智菜美)

(Photo by Getty Images)


【ご紹介した試合はWOWOWオンデマンドで配信中!】

錦織圭vsノバク・ジョコビッチ 全米OP2014 
視聴はこちらから

大坂なおみvsセレナ・ウイリアムズ 全米OP2018
視聴はこちらから

フラビア・ペンネッタ vs ロベルタ・ビンチ 全米OP2012
視聴はこちらから

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川又智菜美

川又智菜美

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WOWOWアナウンサー。慶応大学出身、テニスが大好きなアナウンサーです。
【@w_tennisworld】でテニスについて #ちなみにテニ活 でつぶやきます!

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