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「きっと人生のプラスになる」伊達公子が女子テニスジュニアの育成に見せる“本気”の思い

テニスジュニア育成プロジェクトに取り組む伊達公子

伊達公子の女子テニスジュニア育成が本格化してきた。

2019年度からスタートした育成プロジェクトは、1期2年間、8回のキャンプを通して、グランドスラムジュニアを目指すことをテーマに行われている。現在は2期生8名、5回のキャンプまで終えており、選抜選手である木下晴結(きのしたはゆ)は、グランドスラムジュニアの本戦出場(全豪、全仏、ウィンブルドン)を果たしている。

プロジェクトの途中からは (公財)日本テニス協会(JTA)のサポートも加わり、「リポビタン Presents 伊達公子×YONEX PROJECT ~Go for the GRAND SLAM~」として、テニス界を上げての取り組みとなった。

選抜メンバーは、各々所属クラブや学校の部活でテニスに取り組む中、2年で8回のキャンプに参加している。ここで伊達が伝えることは主に「プロとして世界で戦うということ」だ。どのような生活を送り、何に取り組んでいくのか、それはなぜ必要なのか…。そこには「諦めずに頑張ります」だけはない、プロとして戦っていくための思考と覚悟が盛り込まれている。

進行中の2期目について伊達は語る。
「1期目は私もわからないことだらけだったし、新鮮味もありましたが、2期目は同じことでは良くないなと感じていました。そんな折、1期生の2年目の6月に、JTAと組ませていただくことになり、そこからさらに進化することができました。私が話すことを映像や、スライドにまとめ、毎回のテーマをオンコートでスムーズに子供たちに伝わるように締めてくれています。元々一人でできることではないので、皆さんの力を借りつつ、補ってもらいながら作り上げられたらと思っています」

例えば第5回のキャンプでは、伊達が現役時代に武器としたカウンターショットやドライブボレーを伝授した。練習前のセミナーでそのショットを使う意味を知り、フィジカルトレーニングで体幹を整える。そしてオンコートで実践練習を行うという総合的な練習を組み込んでいる。

「人生をかけて取り組みたいことの一つ」

伊達はジュニア育成についてこう口にした。正解のない世界に、自ら日本女子テニス底上げの旗振り役として立ち上がった背景を語ってくれた。

「セカンドキャリアを終え、何年かかかって受け止められるようにもなったし、自らやらなきゃという気持ちにもなりました。引退後の人生は人それぞれある中で、自分が何に情熱を注げられるかと思ったときに、日本の女子選手がより世界に近づくという取り組みがストンと心に落ちてきました。今、その決断に間違いはなかったと思います。私に与えられた使命と思えるようになりました」

日本女子プロの現状は、伊達がトップ10に君臨していた頃とは大きく変化している。90年代中盤にはグランドスラムに9名の女子選手が出場していた頃と比べれば、現在、100位以内は38位の大坂なおみのみ。土居美咲が長年その座を死守していたが、今年の6月末に陥落する。31歳の土居の孤軍奮闘は評価に値し、20代前半で100位代の内島萌夏、本玉真唯、内藤祐希もステップアップを見せているが、もどかしい現状であることは確かだ。

簡単ではない世界に足を踏み入れることは、自らがプロ選手として実践してきたことと変わりはない。プロジェクトもその場限りではなく、短・中期で考えているという。
「2年後、はい、さよならと野放しになる形は望んではいません。例えば、木下さんのようにグランドスラムジュニアで戦える選手が出てきたら、ナショナルで引き上げてもらいたいし、そういうラインを作っていきたい」

また、選手がランキングを上げるための方策として、ITFジュニアのポイントが獲得できる国際大会を松山、岐阜、久留米に創設し、今後はITF一般大会の新設も視野に入れている。

そして伊達は「何よりも…」という言葉にこう続けた。
「何かしらの縁でテニスと出会い、私を形作ってくれました。テニスと出会っていなければ、人生も大きく違ったと思います。ジュニアたちには当然一握りのところを目指させているので、簡単ではないと思いますが、トライしてやりきったということがあれば何でもできるし、きっと自分の人生にプラスになるはず。だからよりそういう経験を多くの日本人の選手にしてほしい。という思いが全てです」

2期生の心の中に大きなインパクトを残している伊達の言葉の一つに「努力はあたりまえ」がある。5回のキャンプを経て、選抜メンバーたちの意識やフィジカルも変わってきつつある。

世界元4位、2回のキャリアを経験し、2017年で引退した伊達公子の知見からなる「本気」のプロジェクト。卒業までに彼女たちはどのような成長を見せるのだろうか?

(保坂明美)
写真:ヨネックス

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保坂明美

保坂明美

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テニス雑誌「スマッシュ」の編集長を13年間務める。現在は独立し、WEBサイト「Tennis.jp」の管理や、テニスの技術解説企画、選手関連記事の執筆、本の編集、大会の広報業務などを手がけている。

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