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有望なジュニアスキー選手だったシナー「スピードは怖くない、怖いのは…」

写真は2022年「ウィンブルドン」4回戦でのシナー

20歳という若さで既に多くの成功を収めているヤニク・シナー(イタリア)。5つのATP大会で優勝し、トップ10に対しても8勝を挙げ、世界ランキングでは昨年11月に自己最高の9位に上昇。そして「ウィンブルドン」では1回戦でスタン・ワウリンカ(スイス)に対し同大会本戦初勝利を挙げると、4回戦では注目の若手対決となった第5シードの19歳カルロス・アルカラス(スペイン)との対戦を制してベスト8に進出。準々決勝で惜しくも3連覇中だったノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れたが、最初の2セットを奪って元世界王者を崖っぷちまで追い詰めた。若手としてますます注目を集めるシナーだが、もしテニスではなくスキーの道を選んでいたなら彼のキャリアは全く異なるものになっていただろう。ATP(男子プロテニス協会)の公式ウェブサイトが伝えている。

シナーは、幼少期の多くの時間をアルプス山脈のスキー場で過ごした。友人と共にスリルを楽しみ、ジュニア大会にも出場していた。

「僕の出身地では、スキーはかなり普及しているスポーツだった。まさに玄関の前にスキーのスロープがたくさんあったんだ。初めてスキーに行った時のことを覚えている。兄がレッスンを受けていた。それを見て僕もやりたくなったんだけど、母に『今日はだめよ』と言われた」

「僕が泣き続けていたら、『じゃあいいわ』と言ってくれた。1回滑れば家に帰るだろうと思っていたみたいだ。でも僕はスキー場が閉まるまで一日中居続けた。それから毎日通って、大好きになったんだ」

その後、シナーはイタリアでも有望なジュニアスキー選手へと成長し、8歳から12歳までトロフィーを幾つも獲得した。しかし13歳になる頃、スキーよりテニスの優先度が高くなったという。

「幼い頃、テニスは3番目のスポーツだった、サッカーもしていたから。スキーが最優先で、サッカーをして、でもそのうちサッカーは少しずつ止めてしまった。単純にキツすぎたんだ。スキーとテニスは続けていた。僕は友達と過ごすのが大好きでさ。サッカーを止めても、彼らとはスキーで会っていた。一緒にトレーニングしていたからね」

「ある年、僕はスキーでたくさんのトロフィーを獲得した。でも次の年、身体的に他の選手たちの方がずっと強靭だと感じた。2回滑ったけれど、もう心地よさを感じなかった。テニスをするのは大好きだった、すべてを自分で決められたから。自分でコントロールできた、スキーではそれはとても難しかった」

危険という意味では、選手が時速120kmでスロープを滑り降りるスキーの方がテニスより遥かにリスクが高い。シナーも何度か怖い目にあったというが、それが競技をやめる原因にはならなかったと語る。

「衝突もあったよ。大きなものではないけど、幾つかね。衝突した後に滑り続けて止まらなかったこともあった。少し怖いと感じる瞬間もあった、どこで止まるか分からないからね。場所によっては、セキュリティネットがないところもある。覚えている衝突の一つに、ポールを使ってトレーニングしている時に、首にポールが強く当たったことがあった。大丈夫だったけどね。スキーをしていればそういうこともある」

「アドレナリンが好きだったし、今でも好きだよ。スロープを速く降りるのも、車で速く走るのも大好きさ。速いのが好きなんだ。怖くはないよ。怖いのはヘビとホラー映画だね」

シナーは怖いもの知らずの精神力をスロープからコートへと移行させ、逆境で大きな力を発揮してきた。2019年の「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」のチャンピオンであるシナーは、今シーズン4度も相手にマッチポイントを握られてからの逆転勝利を掴んでいる。さらに、ツアー大会の決勝での戦績は5勝1敗と、プレッシャーに強い選手であることが数字からも読み取れる。

「試合で重要な瞬間が訪れると、いい形に集中力を高めることができると感じている。感情をコントロールして、思うようにプレーできる。試合中ずっとこういうアグレッシブな気持ちを持てるよう努力しているところさ。もちろん、いつもより難しい場面もある。重要な局面で、自分のプレースタイルを出すようにしている。僕は自分のことを攻撃的な選手だと思っている。大きなポイントでは攻撃的になることが多い。アグレッシブにボールを打って、これまでそれでうまくいってきた」

今年は、窮地に陥ってから勝利を掴むことが多かったシナー。しかし、今後は背水の陣で挑む状態にならないことを願っている。現在はイタリア人コーチSimone Vagnozzi氏に師事しているシナーだが、6月にはレイトン・ヒューイット(オーストラリア)やアンドレ・アガシ(アメリカ)、シモナ・ハレプ(ルーマニア)らを指導したことで有名な名コーチ、ダレン・ケーヒル氏とトライアルでトレーニングを積んだ。

「今年の“全仏オープン”からメッセージを送りあって連絡を取っていたんだ。ローマ大会の後、彼に電話をして僕とチームを助けてくれる時間があるか聞いてみた。幸運なことに彼に時間があったから、“ウィンブルドン”の前に1週間一緒に練習した。彼は少し僕たちのことを知ることができたし、僕も彼に好感をもっている。 

「彼も同じ気持ちだといいと思う。これが僕とシモンが探してきたものなんだ。もっと対話を持って、細部を詰めたい。うまくいっているし、このままやり続けたいと思っている」

今後の5ヶ月は、ケーヒル氏がチームに加わるか否かに関係なく、シナーは努力を続けより大きな成功をつかもうとしている。そしてオフシーズンが来れば、スロープに戻って趣味のスキーに興じることになる。

「好きなことをしてスイッチを切ることはとても重要だ。スキーはそういう趣味なんだ。今年の冬に行く時は気を付けなきゃいけないってことだけだね。あまり速く滑れないから。友達とは、僕たちはずっと速く滑り続けるって言ってたけど、今はできなくなった。気を付けなきゃいけないからね!」

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2022年「ウィンブルドン」4回戦でのシナー
(Photo by Simon Stacpoole/Offside/Offside via Getty Images)

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