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「犬猿の仲」は過去の話。インスタでやりとりするジョコビッチとキリオスが激突

2017年ATPアカプルコでのキリオスとジョコビッチ

四大大会21度目の優勝が懸かるノバク・ジョコビッチ(セルビア)と、初タイトルをねらうニック・キリオス(オーストラリア)という興味深い顔合わせが実現した。

常勝ジョコビッチだが、実はキリオスには分が悪い。過去の対戦は2度だけ(いずれも17年3月)だが、ともにキリオスが勝っている。ジョコビッチが複数回対戦して一度も勝ったことのない選手は、3人しかいない。マラト・サフィン(ロシア)とイリ・ベセリ(チェコ)、そしてキリオスだ。

かつてテニス王国の一つに数えられたオーストラリアだが、四大大会の男子シングルスではもう20年も優勝者を出していない。キリオスが優勝すれば、02年ウィンブルドンを制したレイトン・ヒューイット以来のオーストラリア選手のグランドスラム栄冠となる。
プレースタイルは好対照だ。丁寧にラリーを続け、攻めているわけではないのに相手を追い込んでしまうジョコビッチと、常に大胆な攻めを試み、いつどこからでもポイントを取りにいくキリオス。コントラストは数字にもあらわれている。準決勝までの平均ラリー数は、ジョコビッチの4.21本に対し、キリオスは3.17本。相手あってのことだから、全試合の平均で「1.04」の差は決して小さくない。ジョコビッチも当然、チャンスと見れば早い攻めを試みるし、サーブでのフリーポイントも多い。それでこの差がつくくらい、両者の目指すスタイルがかけ離れているのだ。

二人はかつて犬猿の仲と言われた。20年全米でジョコビッチがいらだって背中越しに打ったボールが線審に当たり、失格になった一件でも、キリオスは〈俺なら何年間の出場停止になる?〉とツイッターでアンケートを行い、痛烈な皮肉を浴びせた。違反行為で何度も処分を受けてきた自分を引き合いに出し、ジョコビッチの行為を批判したのだ。
「WOWOWテニスワールド」でも以前、キリオスがジョコビッチについて〈彼は人に好かれたいという願望に病的にとりつかれているように感じる〉と語ったことを伝えた。

そのキリオスが、21年全豪でワクチン接種が出場の条件になると決まると、接種を拒否するジョコビッチを擁護した。「強制は道義的に間違っている。ワクチンを打っていないからプレーできないというのは正しいこととは思えない」。この発言にジョコビッチは「ここ数年の彼の僕に対する発言を知っていただけに予想外だった」と驚きを隠さなかった。
さらにキリオスは入国拒否の問題でも「(豪州の)対応はすごく悪い。彼も一人の人間だ。もっとましな対処の仕方があるだろう」と擁護した。その経緯を受け、ジョコビッチは今大会、決勝でのキリオスとの対戦が決まるとこう話した。
「オーストラリアで本当に大変だった時、彼は公の場で私を支持し、味方になってくれた数少ない選手の一人だった。本当にありがたかった」

キリオスは今の二人の関係について、こう話している。
「我々は、妙な話だが、ちょっとした仲良し関係にある。しばらく愛は存在していなかったことは誰もが知るところだろう。全豪での(入国拒否)騒動のとき、彼のために立ち上がった選手や関係者は僕だけだったのではないか。今はインスタグラムのDMでメッセージをやりとりしたりしている。本当に不思議だ。週の初め、彼は〈日曜日に(決勝で)会えるといいけど〉と書いてきた」
もし、二人が犬猿の仲という印象をお持ちなら、アップデートしておくことをおすすめする。

四大大会の決勝に初めて臨むキリオスは謙虚だ。ラファエル・ナダル(スペイン)が棄権を申し出て決勝進出が決まったが、その夜は「興奮で1時間くらいしか眠れなかった。不安でたまらなかった」という。
「僕は決勝が初めてだから、ジョコビッチにはアドバンテージがある。彼は経験を生かせるし、どんな感情を抱くかもわかっている。僕にはそれがわからない。だからいろんな考えが頭の中をグルグル回っていたんだ」
眠れぬ夜について話したキリオスは、「今夜はカモミールティーを飲むつもりだ」と続けた。気持ちを落ち着かせる作用があるというカモミールティーが、優勝の行方を左右するカギの一つになるのだろうか。

ジョコビッチはグランドスラム決勝での経験値が少しは有利に働くと認めた上で、こう話している。
「彼は大一番を得意とする選手。キャリアを見ると、最高のテニスをするのは決まってトッププレーヤーとの対戦だ。だから我々は彼をリスペクトするんだ」
キリオスの潜在能力と精神的な成長を認めるジョコビッチは「最終的には、決定的な瞬間にどちらがよりタフで冷静でいられるかというメンタルゲームになる」と断言した。

(秋山英宏)

※アイキャッチ写真:2017年ATPアカプルコでのキリオスとジョコビッチ(Photo by Miguel Tovar/LatinContent via Getty Images)
 記事中写真:「ウィンブルドン」でのジョコビッチ(Photo by Shi Tang/Getty Images)
 記事下写真:「ウィンブルドン」でのキリオス((Photo by Shaun Botterill/Getty Images)

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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