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「故障と自信喪失」の1年を乗り越えたハレプが3年ぶりの準決勝へ

※写真はアイキャッチ写真:「ウィンブルドン」準々決勝でアニシモワに勝利したハレプ(Photo by Frey/TPN/Getty Images)

2019年のウィンブルドン女王シモナ・ハレプ(ルーマニア)が帰ってきた。アマンダ・アニシモワ(アメリカ)を約1時間で下し、優勝した19年以来3年ぶりの4強入りを決めた。

アニシモワが攻めているのに、3本4本と打つうちに、攻められていたはずのハレプが優勢になっている。ハレプは相手のフラット系の速いボールを苦にしなかった。返球の質が高いから、どちらが攻めていたのか分からないラリーになる。カウンターパンチャーの面目躍如だ。

それだけではない。目立ったのはサーブ力だ。ファーストサーブ時のポイント獲得率は63%と平凡だったが、セカンドサーブ時のポイント獲得率77%と圧倒的な数字を残した。サーブからの3球目以降の攻めが機能しているから、こういう数字になる。

ポイントが取れないアニシモワが、糸が切れたようにリスキーなショットを続ける場面があった。敗れたアニシモワは「シモナは相手にしていてタフな選手。彼女に対してどうすれば最高のテニスができるか、見つけ出すのは難しい」と嘆いた。

ハレプには粘り強く戦うイメージもあるが、自分からボールを動かして、相手に甘い返球を強いる。そうやって理詰めにポイントを組み立てるから、安定感のある戦い方ができる。今大会はいまだセットを失っていない。5試合戦って、試合時間が70分を超えたのは、キルステン・フリプケンス(ベルギー)との2回戦(所要時間83分)のみ。まさに快勝続きだ。

準決勝進出をハレプは「超ハッピー」と喜んだ。
「何度も言っているように、私はとても苦しんだ。今、グランドスラムの準決勝にいることは、とても意味のあることです。この2、3ヶ月、本当によくやっていたので、それが報われた」

苦しんだとは、昨年の故障と「自信喪失」を指している。「最も難しい1年だった」という。左ふくらはぎを痛め、優勝経験のある全仏とウィンブルドンを欠場した。2010年のトップ100デビューから初めて経験する、優勝も準優勝もないシーズンになった。最終ランキングは20位。トップ10圏外でオフを過ごすのは8年ぶりだった。

今季も順風満帆とは言えない。2月にドーハで1回戦負けを喫したときは「もうこれ以上は無理」と感じたという。
「かなり落ち込んでいた。疲れ果てていた。再び上位集団に入れるとは思えなかった」

その時期に巡り合ったのが、今、フルタイムでコーチをつとめるパトリック・ムラトグルだ。
「彼のアカデミーで朝8時から練習する子どもたちの『いつかチャンピオンになりたい』という思いが、私に「まだテニスができる、まだテニスが好き」という気持ちを取り戻させてくれた」とハレプはいう。

意欲的に臨んだ全仏は、2回戦の試合中にパニック発作に襲われ、逆転負けを喫した。ハレプはその試合を振り返ってこう話した。
「おそらく大会のプレッシャーと、昨年の大会で苦戦したことが原因でしょう。自分が十分に強いと信じられていなかったのだと思う」

「全仏オープン」でのハレプ(Photo by Robert Prange/Getty Images)

その失意から立ち直って臨んだウィンブルドンだった。

男女のディフェンディングチャンピオンが毎年、センターコートの開幕試合に登場するのが習わしだが、20年大会はコロナ禍で中止となり、19年女王のハレプはオープニングマッチの名誉を受ける機会を逃した。昨年も故障で欠場し、まだ機会に恵まれていない。
「おそらくこの人生でもう一度チャンスがあると思うので、それを楽しみにしています」と開幕前に話したハレプ。権利獲得まで、あと2勝となった。

(秋山英宏)

※アイキャッチ写真:「ウィンブルドン」準々決勝でアニシモワに勝利したハレプ(Photo by Frey/TPN/Getty Images)
 記事中写真:「全仏オープン」でのハレプ(Photo by Robert Prange/Getty Images)

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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