ヨーロッパでのクレーコートシーズンが終了し、テニスツアーは短いグラスコートシーズンを迎える。ハード、クレー、グラスの3つのサーフェスの中ではグラスが最も球足が速く、バウンドは低くなるため、ビッグサーバーや、今ではあまり人数は多くないがサーブ&ボレーを得意とする選手たちに有利と言われている。6月末から開催される「ウィンブルドン」に関しては様々な問題が出てきているが、いったいどんな状況となるのだろうか。
<6月の大会カレンダー>
男子
6月6日~6月12日 「ATP250 シュトゥットガルト」(ドイツ、グラスコート)
6月6日~6月12日 「ATP250 セルトーヘンボス」(オランダ、グラスコート)
6月13日~6月19日 「ATP500 ロンドン」(イギリス、グラスコート)
6月13日~6月19日 「ATP500 ハレ」(ドイツ、グラスコート)
6月19日~6月25日 「ATP250 マヨルカ」(スペイン、グラスコート)
6月20日~6月25日 「ATP250 イーストボーン」(イギリス、グラスコート)
6月27日~7月10日 「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン、グラスコート)
女子
6月6日~6月12日 「WTA250 ノッティンガム」(イギリス、グラスコート)
6月6日~6月12日 「WTA250 セルトーヘンボス」(オランダ、グラスコート)
6月13日~6月19日 「WTA250 バーミンガム」(イギリス、グラスコート)
6月13日~6月19日 「WTA500 ベルリン」(ドイツ、グラスコート)
6月19日~6月25日 「WTA250 バッドホンブルク」(ドイツ、グラスコート)
6月19日~6月25日 「WTA500 イーストボーン」(イギリス、グラスコート)
6月27日~7月10日 「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン、グラスコート)
「ATP500 ロンドン」(イギリス・ロンドン/6月13日~6月19日/グラスコート)
「全仏オープン」の終了と共にクレーコートシーズンが終わってから、次のグランドスラムである「ウィンブルドン」までの間が3週間しかないため、選手たちはみな数少ないグラスコートの大会に出場し、サーフェスに慣れるために調整する。これまでにこのロンドン大会と「ウィンブルドン」を連覇した選手は7人、ジョン・マッケンロー(アメリカ)、ジミー・コナーズ(アメリカ)、ボリス・ベッカー(ドイツ)、ピート・サンプラス(アメリカ)、レイトン・ヒューイット(オーストラリア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マレー(イギリス)だ。最多優勝はマレーの5回。昨年の覇者はマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)で、ベレッティーニはその後「ウィンブルドン」で決勝進出を果たした。
賞金総額は213万4520ユーロ(約2億9600万円)。シングルスの優勝賞金は39万9170ユーロ(約5531万円)、準優勝21万4775ユーロ(約2976万円)。1回戦敗退は1万6650ユーロ(約231万円)、予選1回戦敗退は4785ユーロ(約98万円)となっている。昨年はコロナ禍の影響で賞金が大幅に減額になっていたので、今年は去年より総額で約65%増。個々の賞金も、昨年は勝ち進むほど減額幅が大きくなっていたので、それを取り戻すように、予選1回戦敗退は約34%増、1回戦敗退の賞金は約14%増なのに対し、準優勝では約155%アップ、優勝賞金は約250%の増額となった。
ランキングポイントは優勝者に500ポイント、準優勝300、準決勝進出180、準々決勝進出90、ベスト16進出45ポイントが与えられる。
シングルスの出場選手は32名。6月2日時点での上位8シードは、カルロス・アルカラス(スペイン)、キャスパー・ルード(ノルウェー)、ベレッティーニ、キャメロン・ノリー(イギリス)、テイラー・フリッツ(アメリカ)、デニス・シャポバロフ(カナダ)、ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)、ライリー・オペルカ(アメリカ)となっている。その他にガエル・モンフィス(フランス)、マリン・チリッチ(クロアチア)、マレー、スタン・ワウリンカ(スイス)らがエントリーしている。
「ATP500 ハレ」(ドイツ・ハレ/6月13日~6月19日/グラスコート)
ハレとロンドンのATP500大会は同じ週に開催されるので、トップ選手の多くはそのいずれかに出場する。この大会ではロジャー・フェデラー(スイス)がこれまでに10度の優勝を遂げている。昨年の覇者はユーゴ・アンベール(フランス)。賞金とポイントは、ロンドン大会と同じだ。
こちらもシングルスは32名で、6月2日時点での上位8シード選手はダニール・メドベージェフ(ロシア)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、ステファノス・チチパス(ギリシャ)、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)、フェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)、ヤニク・シナー(イタリア)、フベルト・フルカチュ(ポーランド)、パブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)となっている。その他には若手注目株のセバスチャン・コルダ(アメリカ)やオルガ・ルーネ(デンマーク)、芝コートが大好きな「悪童」ニック・キリオス(オーストラリア)らがエントリーしている。
「WTA500 ベルリン」(ドイツ・ベルリン/6月13日~6月19日/グラスコート)
この大会は元々1894年からハンブルクで、クレーコートで開催された大会だったが、2008年以降はいったん中断され、2021年にグラスコートの大会として復活。昨年はシングルスのシード選手としてアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)やエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)らが出場していたが、当時世界ランキング106位だった予選勝者のリュドミラ・サムソノワ(ロシア)が上位選手らを次々と倒してツアー初優勝を遂げた。
ランキングポイントは優勝者に470ポイント、準優勝305、準決勝進出185、準々決勝進出100、ベスト16進出55、1回戦敗退1ポイントが与えられる。
シングルスの出場者は32名で、6月2日時点での上位8シードはイガ・シフィオンテク(ポーランド)、マリア・サカーリ(ギリシャ)、パウラ・バドーサ(スペイン)、アネット・コンタベイト(エストニア)、オンス・ジャバー(チュニジア)、アリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)、カロリーナ・プリスコバ(チェコ)、ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)。ダブルスには柴原瑛菜(日本/橋本総業ホールディングス)/エイジア・ムハメッド(アメリカ)ペアや、穂積絵莉(日本/日本住宅ローン)/二宮真琴(日本/エディオン)ペアもエントリーしている。
「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)
6月27日にテニス界の最高峰の大会とも言える「ウィンブルドン」が幕を開ける。昨年、女子シングルスでは当時の世界女王アシュリー・バーティ(オーストラリア)が、決勝でプリスコバを破って「子供の頃からの夢だった」という初優勝を遂げた。男子では世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)がベレッティーニを倒して、年間グランドスラムに王手をかけた。男子の最多優勝はフェデラーの8回、女子はマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)の9回。女子の現役選手ではセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の7回が最多だ。
今年の「ウィンブルドン」の問題は、まず大会側が、国の方針に従ってロシアとベラルーシの選手の出場を禁止したことだ。ATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子テニス協会)、ITF(国際テニス連盟)は「国籍による差別」だとしてこれに反発。「ウィンブルドン」では選手らにランキングポイントを付与しないと決定した。大坂なおみ(日本/フリー)は、「ポイントが得られないならエキシビションマッチと同じ」と言って、出場するかどうかはわからない、と述べた。また元テニス選手でロシアの侵攻後にウクライナ軍に志願したセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)は、ロシアとベラルーシの選手を除外した「ウィンブルドン」の決定を賞賛し、それに逆らうATPやWTAのやり方を「侵略者や殺人者の側に立つ人間がいるとは思わなかった」と非難した。
そしてとりわけ昨年の大会で大きなポイントを得たジョコビッチやベレッティーニ、プリスコバらは、失うポイントを防衛するすべがなく、ランキングが下がってしまう危険に晒されている。その他の選手らからも、「ATPやWTAは選手の声を聞いていない」という不満の声が上がっている。
本来ならば多くの選手が出場することに憧れ、勝利することを夢見る「ウィンブルドン」。新型コロナウイルス関連の規制も大幅に緩められ、テニスができる日常、観戦できる日常を喜ぶ大会となるはずだった。今年の「ウィンブルドン」はいったいどんなふうに開催されるのだろうか。
※為替レートは2022年6月2日時点
(WOWOWテニスワールド編集部)
Photos by ATP Tour / Getty Images