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同世代のライバル対決でアルカラスに完敗。それでも光ったコルダのショットメーク

全仏オープンでのセバスチャン・コルダとカルロス・アルカラス

大会序盤の注目の一戦だった。第6シードのカルロス・アルカラス(スペイン)と第27シード、セバスチャン・コルダ(アメリカ)の3回戦は、19歳と21歳、次世代の旗手と目される両雄の顔合わせだった。

大会序盤の注目の一戦だった。第6シードのカルロス・アルカラス(スペイン)と第27シード、セバスチャン・コルダ(アメリカ)の3回戦は、19歳と21歳、次世代の旗手と目される両雄の顔合わせだった。

アルカラスは今シーズン、ツアー最多の4大会に優勝。前哨戦のマドリードではノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)の両巨頭を倒し、大会最年少優勝を飾っている。今季、クレーコートでは18勝1敗(対戦時)と無双状態だ。
クレーコートで唯一の黒星をつけたのが、このコルダだ。クレーが得意なプレーヤーという印象は薄い。今季、クレーでは8勝5敗。ただ、20年には初出場の全仏で4回戦に進出して注目された。

クレーが得意そうなイメージを持ちにくいのは、コルダが回転量の少ないフラット系の球筋の持ち主だからだ。クレーでは高い弾道のトップスピン、いわゆる「重いボール」で相手の返球を困難にしてチャンスを作る選手が多い。しかしコルダはクレーでもフラット系のショットを自在に操り、そのショットの深さとプレースメント、プレースピードの早さで勝負する。ボールを捉える才能に恵まれた選手だからこそ、ハードコート向きと思われる独特のスタイルをほぼそのままクレーコートに持ち込むのだ。
この特異なプレースタイルの持ち主が、クレーのモンテカルロでアルカラスに勝ったというのが興味深かった。

全仏で実現した再戦はナイトセッションで行われた。高位シードではないが、その日の要注目カードと見なされたからだ。序盤から両者が持ち味を出した。アルカラスの高く跳ねるスピンに、コルダはしばしば重心が浮き、不十分な体勢での返球を強いられた。それでもコルダは抜群の適応力を見せ、その深くプレースメントされたボールにアルカラスが悩まされる場面もあった。

アルカラスは第1セットの第3ゲームでブレークに成功、流れを引き寄せた。その後も、アルカラスが比較的簡単にサービスゲームをキープしたのに対し、コルダは四苦八苦した。第2セットは競り合った。第4ゲームはアルカラスが2度のブレークポイントをしのぎ、なんとかキープ。すかさず次のゲームでブレークし、一歩抜け出した。アルカラスの5-3で迎えた第9ゲームでは、コルダが5度のセットポイントをセーブしてキープに成功。この試合で最高の見せ場を作った。

結果はアルカラスのストレート勝ち。前回の借りを返した形だ。快勝のアルカラスは試合後、「あなたの他の選手との違いは?」と聞かれ、こう答えた。
「常に攻撃的であることだよ。負けても勝っても、タフな場面、タフな試合でも、試合中ずっと自分のスタイルを貫いている。そこが他の選手との違いだと思う」
ライバルとの試合が接戦にならなかったのは、このマインドセットとそれを実践する精神面の強さがあるからだろう。

所要時間2時間6分、6-4,6-4,6-2はスコアの上ではアルカラスの楽勝だった。しかし、この試合にはスコアの推移とは別の見どころがあった。先行を許し、なんとか巻き返そうという試行錯誤で、コルダのスキルの高さを堪能できた。
低い弾道を持つ深いボールはもちろん、ベースラインからコースを変えて打ち返すショットの正確さには目を見張らされた。場面は限られたが、アプローチショットからネットへのスムーズな動きとボレーの高い技術も見せた。

コルダの陣営席には、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)のコーチを務めたラデク・ステパネクの姿があった。もともと、チームは人材豊富だ。父親で元トッププレーヤーのペトル・コルダに加え、米国テニス協会の育成プログラムでジュニア期のコルダを指導し、18年の全豪ジュニアの優勝に導いたディーン・ゴールドファインコーチ、さらに11歳の頃からコルダを知るチェコ人コーチのテオドール・デボティが並ぶ陣営に、さらに名参謀が加わった形だ。

その力も借りながら、コルダは力をつけていくだろう。今季はアルカラスに加え、フェリックス・オジェ アリアシム(対戦時10位)らを破っている。昨シーズンの開幕時はトップ100圏外で、そこからまたたく間に現在の世界ランキング30位にのし上がった。デボティコーチは「彼は将来的にトップ10に入ると信じている。それだけの潜在能力はある」と話している。
30位が単なる通過点であることは言うまでもない。

(秋山英宏)

写真:Getty Images

秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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