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まるでデジャヴ。若武者ムゼッティが2年続けて2セットアップから逆転負け

全仏オープン2022 1回戦でのロレンツォムゼッティ

デジャヴを見るようだった。昨年は4回戦でノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦、2セットを先取しながら逆転で敗れたロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)が、今度は第4シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)に2セットアップから逆転負けを喫した。

ジョコビッチに敗れたあと、ムゼッティはこう話した。
「世界ナンバーワンの選手から2セットを奪った。僕はたくさんのイメージと感情を、それだけでなく、大きな経験を持ち帰ることができる。もっともビッグな選手との差を知り、良いプレーをすればこのレベルにとどまることができるとわかった」
19歳は、敗れてなお、ポジティブな手応えとともにローランギャロスを去っただろう。選手は敗戦からより多くを学ぶ。ナンバーワンのジョコビッチは、最高の教材を与えてくれたはずだ。しかし、ムゼッティは再び失敗をおかしてしまう。

最初の2セットはその才能を存分に見せつけた。高い弾道のヘビートップスピンと、上からたたくフラットを臨機応変に打ち分けた。緩急や角度の付け方、骨惜しみしないフットワークは、クレーコートの戦い方が体にしみついていることをうかがわせた。昨年、ジョコビッチは「トッププレーヤーになるためのすべての資質を備えている」とムゼッティを褒めたが、20歳になった若武者は一段と力強く、攻撃的になっていた。

「デジャヴ」と書いたが、さすがに細部まで同じというわけではない。ジョコビッチは2セットダウンの第3セットからムゼッティのあらゆるショットに対応し、泰然と、したたかに流れを引き寄せた。体力の尽きたムゼッティは残りの3セットで1ゲームしか奪うことができなかった(第5セット0-4で棄権)。一方、今回のチチパスは別の形で形勢を逆転させた。まるで準決勝か決勝の最終セットに臨むような集中力と力強さで、後半3セットを戦ったのだ。チチパスは大逆転劇をこう振り返る。
「ことは簡単には運ばないものだ。僕はあきらめない。それが僕のやり方だ。0-2になっても、取り返そうとは考えなかった。1ポイント1ポイント、プレーしていくだけなんだ。努力が、より長いスケールで報われることをひたすら願いながら。あの状況では、登らなければならない山が目の前に存在する。僕はそれを登り、着実に、コンスタントに、勢いを取り戻すことができた」

第3セット、チチパスのファーストサーブ時のポイント獲得率は100%をマーク。最終セットも88%の高確率だった。グラウンドストロークでも、攻めの早さと精度の高さが光った。獲物に襲いかかる肉食獣のような迫力だった。トッププレーヤーだけができる、鮮やかなギアの切り替えだった。
ムゼッティにしてみれば、勢いを止められたときにどう対処するかという課題を再び突きつけられた。
「彼はファイトする。素晴らしい片手打ちバックハンドを持った、才能あるプレーヤーだ。彼はクレーコートのゲームを知っている。彼はこのコートで成長してきた。どんな状況でも、間違いなく難しい相手だ」
チチパスは、苦しめられた相手をこう評している。だが、ムゼッティはクレー育ちの長所を存分に活用したとは言えない。チチパスの勢いを止め、あるいは、はぐらかすような技術、戦術の引き出しを開けるべきだった。また、昨年よりはよかったが、ロングマッチを戦い抜くための体力、メンタルの持久力にも改善の余地が残る。

深夜1時過ぎ、疲れた様子でムゼッティが報道陣の前に姿を現した。
「今の僕に欠けているのは、間違いなく体力を持続させること。でも、僕はまだ20歳で、幸いなことに時間がある」
大舞台ローランギャロスでの2度の失敗は、逸材を飛躍させる糧となるに違いない。

(秋山英宏)

(Photo by Getty Images)

秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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