フェデラーはファンに愛される王者へと成長したものの、そうなる以前の時期もあった。1998年にプロテニス選手となったフェデラーがグランドスラムで初優勝を飾ったのは、2003年の「ウィンブルドン」においてであった。

この5年の間、フェデラーはまだプロ選手として一人前になろうとしており、がっかりするような敗戦にも見舞われていた。たとえばフェデラーはベーグルをくらって自分より経験豊富な選手に敗れたこともある。

フェデラーが0-6でセットを落としたことは近年にも数回あったが、これはなおのこと驚きだ。通算すると、フェデラーは1ゲームも獲得できずにセットを落としたことが5度ある。これらの試合を、スポーツウェブメディアSportskeedaが紹介している。

1：1999年「ATP1000 モンテカルロ」　ビンセント・スペイディア（アメリカ）

フェデラーは1999年に「ATP1000 モンテカルロ」に初出場。ワイルドカード（主催者推薦枠）で出場した当時世界ランキング128位のフェデラーは、1回戦で世界33位のビンセント・スペイディアと対戦した。

第1セットでは接戦を演じたもののタイブレークでセットを落とし、第2セットは競り合うことも難しく一方的な試合運びとなった。スぺイディアはフェデラーのサービスゲームを3度ブレークし、6-0で勝利を掴んで2回戦に駒を進めた。

スぺイディアが引退するまでに二人はさらに2度対戦したが、この2試合ではいずれもフェデラーがストレートで勝利している。興味深いことに、最後の対戦となった2006年の「全米オープン」で、フェデラーはスぺイディアにベーグルをお見舞いしている。

2：1999年「全仏オープン」パトリック・ラフター（オーストラリア）

1999年の「全仏オープン」で、当時世界111位だったフェデラーは初めてグランドスラムの本戦に出場。残念なことにドローはフェデラーに優しいものではなく、1回戦から元世界王者のパトリック・ラフターと戦わなければならなかった。

フェデラーは第1セットを7-5で勝ち取ったものの、続く3セットではさほどの競り合いに持ち込むにも至らず降伏した。第3セットでは1ゲームも獲得できずに終わり、フェデラーにとってこの日の最悪のセットとなった。

二人はこれ以降、2001年のマイアミとハレで2度対戦したが、いずれもラフターが勝利。これにより、ラフターは3種類のサーフェス全てでフェデラーに勝ち越している、わずかな選手の1人となっている。

3：1999年「ATPロンドン」　バイロン・ブラック（ジンバブエ）

フェデラーが「ATPロンドン」（現「ATP500 ロンドン」）に出場したのは1999年の1度だけだが、良い思い出とは言えないかもしれない。ノーシードで出場したフェデラーは、1回戦で第13シードのバイロン・ブラックと対戦した。

試合はブラックがストレートで勝利したが、第2セットではフェデラーをベーグルで討ち取った。二人がATPツアーで対戦したのはこの試合だけで、フェデラーが雪辱を果たす機会は得られなかった。

4：2008年「全仏オープン」　ラファエル・ナダル（スペイン）

2008年「全仏オープン」の決勝は、連続3年目となるフェデラーとラファエル・ナダルの対戦であった。フェデラーは3年続けて力及ばず、3度目のタイトル防衛に臨んだナダルはストレートでフェデラーを退けた。最初の2セットを6-1、6-3で取ったナダルは、第3セットを6-0で奪い、並外れた勝利を締めくくった。

これは四大大会20度の優勝を誇るフェデラーにとって、グランドスラムでの試合で過去最悪の敗戦ともなった。だがフェデラーは2011年「ATPファイナルズ」のグループステージでナダルにベーグルをお見舞いし、この時の雪辱を果たしている。

5：2021年「ウィンブルドン」　フベルト・フルカチュ（ポーランド）

フェデラーがもっとも最近グランドスラムに出場したのは2021年の「ウィンブルドン」で、このとき彼はベスト8まで勝ち残った。だが残念なことに、その進撃は厳しい形で終わってしまった。

同大会を最多記録の8回制しているフェデラーは、準々決勝で第14シードのフベルト・フルカチュと対戦。フェデラーはストレートで敗れ、第3セットでベーグルをくらった。フェデラーが「ウィンブルドン」でストレートで敗れるのは2002年以来のことで、ベーグルをくらったのはこれが初めてであった。

フェデラーは25年に及ぶ輝かしいキャリアの中で、ベーグルをくらったのは上記のわずか5回きりなのだ。