どのスポーツでも言えることだが、ただ闇雲にボールを打っていても試合には勝てない。何らかの戦略を立てることが重要になる。そこで今回は、テニスの戦略の考え方や立て方について解説する。テニスメディアのTennis World USAが伝えている。
戦略について考える前に、基本をしっかりと身につけておく必要がある。その上で、戦術という観点から、対戦相手に対してとれるアクションには次のようなものがある。
・相手のバックハンド側を攻める
・相手のフォアハンド側を攻める
・高いボールを多く打つ
・相手の足元やベースラインを狙う
・相手の体に向かって打つ
戦略を練るということは、コート上で実際にやって、成功するアプローチを見つけるということだ。実用的であるということが大切で、戦略を練る上で自分の実力に見合った現実的なものを選択するべきだ。もし初心者なら戦略はシンプルにして、コートの真ん中を狙いできるだけ深く打つことだけに集中する方が良い。この方法には、次のようなメリットがある。
・対戦相手をベースラインの後ろに留めておくことができる
・ネットは中央が低くなっているので、ミスしにくい
・コートの真ん中に打てば、相手は斜め方向にショットを打ちにくくなる
この方法のデメリットは、ボールをバックハンド側に打ったとしても、相手が回り込んでフォアハンドで打ってくる可能性が高くなることだ(もし相手がバックハンドが得意なら、その逆)。
上記の方法は良い戦術ではあるが、現実では、ほとんどの初心者はショットを打つのが精一杯で、戦略を気にする余裕はないだろう。多くの場合、戦略について思い悩むより、しっかりショットを決めることに集中した方が良い結果を生む。
最初のチャンスでネットに出る
先程の戦略に沿ってプレーした場合、最初に訪れたチャンスでネットに出るのが特に重要となる。中級者はネットに出るのを嫌う傾向があるが、先に攻撃を仕掛けることが上級者へと成長するための鍵となる。相手が短いボールを打った時を見逃さないように常に気を配るようにすれば、強めのショットを打ちながら前に出るチャンスを得られる。毎回ではなくとも、ポイントを取る可能性が高くなる。また、ネットに出る意思があることを相手に示せれば、よりプレッシャーをかけられる。相手は、いつも以上にボールを深く打つことに集中せざるを得なくなる。
より確実な道を選ぶ
プロの試合でも、試合後のデータを見るとウィナーの数よりエラーの方が多いことがある。初心者として覚えておきたいのは、よりエラーの少ない選手が勝利する可能性が高いということだ。ミスの数を最小限に抑え、確実なプレーを心がけよう。ボールをコート中央に深く打つという戦略が有効なのは、確実な方法でありながら、相手にプレッシャーをかけられるからだ。確率を理解することが勝利へ近づくポイントとなる。ウィナーを打とうとした場合、素晴らしいショットを決められる可能性もあるが、エラーを犯す可能性の方が高い。また、ある戦略がうまくいっているなら、うまくいかなくなるまでその戦略を続けることも大事だ。ポイントを取られることが続いているなら、状況を好転させるために戦術を変えよう。
プレッシャーのかかる場面では、適切なショットを
プレッシャーがかかる場面では、正しいショットを打つことが非常に重要だ。そうでなければエラーを犯すか、相手がたやすくウィナーを打って終わりになってしまう。プレッシャー時の良い戦略は、派手なウィナーを打とうとせず、安定した、比較的無難なショットを打ち、ラリーを続けることだ。と言っても、緊張する場面では、体が自身を裏切り、意図しないミスショットをすることもある。それでも、成功率の低いショットと無難なショットでは、ミスをする確率に差があることは明らかだ。
追い詰められたときは、高いボールを
かなり不自然な体勢でボールを打たなければならなくなった時、無理をしてでもウィナーを打って決着をつけたいという誘惑に駆られるかもしれない。だが、そういう時はボールをネットの向こうに高めに打つのが最善の方法だ。相手がコートの後方にいる場合は、トップスピンのかかった高いボールは対処が難しいし、相手がネットに攻め込もうとしている場合は、更に高く打ち上げてロブにするのがいいだろう。うまくいけば、相手は防御に回らざるを得なくなり、ラリーは最初からやり直しになる。相手のベストショットを返したとなれば、相手の自信を削ぐこともできる。
相手のリズムを崩す
対戦相手がハードヒッターで、リズムに乗ってプレーすることが好きなタイプであれば、様々なショットでリズムを崩すのも手だ。例えば、遅いボールが来ると、相手はあなたの力を利用できず、自分からラリーのペースを作っていかなければならない。スライスショットや、高めのトップスピンショットも、そういった選手のリズムを崩すのに有効だ。
相手の弱点に集中する
相手が非常に強いショットの持ち主であれば、そういったショットを打ちにくくし、相手に主導権を握らせないようにしたい。代わりに、相手があまり得意ではないショットを打たせるようにしよう。例えば、相手がフォアハンドは強打するが、バックハンドは比較的弱めだったとする。そういった場合は、まずバックハンドを集中的に打たせるようにする。相手がバックハンド攻撃に慣れてきた頃には、フォアハンドサイドにスペースが生まれる。そこにウィナーを打ち込む、といった具合だ。
クロスコートを利用する
チャンスが来たら、ダウンザラインを打ちたくなるものだ。成功すれば、周りをあっと言わせる素晴らしいショットになることは間違いない。しかし、ダウンザラインは決めるのが難しいショットであることも理解しておこう。実際、クロスコートを打つ方がずっと確実で、その理由もいくつか挙げられる。まず、サイドではネットの高さがずっと高い。つまり、ダウンザラインを打つためにはより正確なショットが要求される。また、ボールが来た方向に打ち返す方が、方向を変えるよりずっと楽だ。ショットの方向を変える時は、タイミングが少しでもずれるとエラーになりやすいことを覚えておきたい。
目的を持ってショットを打つ
より経験を積んだ選手は、ウィナーよりミスの方が重要だということを知っている。したがって、より確実で安定したショットを打つこと、そして常に目的を持って打つことが大切だ。ハイレベルな試合では、ウィナーを打つスペースを見つけることがとても難しい。その時々で適切なショットを打つことを優先するべきだ。エラーを最小限に抑え、その上で、相手が甘いボールを打ってきたらそのチャンスを活かすようにしよう。
(WOWOWテニスワールド編集部)
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