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グランドスラム王座への道~第3回 栄光後の25歳での電撃引退 アシュリー・バーティ

全豪オープンでのアシュリー・バーティ

このシリーズではこれまでにグランドスラム制覇を遂げたチャンピオンたちや、これから優勝を目指す選手たちをランダムに取り上げ、それぞれの「王座への道」を紹介していきたい。今回ご紹介するのは、2022年の「全豪オープン」で地元での歓喜の初優勝を遂げた後に、25歳で世界女王のまま引退を発表したアシュリー・バーティ(オーストラリア)だ。

1996年4月24日生まれのバーティは、2019年の「全仏オープン」でグランドスラム初優勝。2021年の「ウィンブルドン」を制した時には、「子供の頃からの夢が叶った」と語っていた。そして翌2022年の「全豪オープン」で、オーストラリアのテニスファンが待ち望んでいた、44年ぶりとなるオーストラリア人選手としての優勝を飾った。

↑写真は「全仏オープン」でのバーティ(Photo by TPN/Getty Images)

世界ランキングでは全仏優勝後の2019年6月に初めて1位に上り詰め、2019年から2021年まで3年連続で年末ランキング1位を達成。25歳でこれだけのことを成し遂げていたのだから、順風満帆なテニス人生にも見えるが、必ずしもそうではなかった。

2011年に15歳で「ウィンブルドン」ジュニアを制したバーティは、18歳の時に一度テニスから離れた。それまでに彼女は、今回の引退に当たってその発表の「聞き役」を果たしたケーシー・デラクア(オーストラリア)と組んだダブルスでは、既に「全豪オープン」「ウィンブルドン」「全米オープン」で決勝進出を果たしていたが、シングルスではまだ世界ランキング100位に達していなかった。彼女は世界中で試合して回る生活に疲れ果てて、テニスに喜びを見出せなくなっていた。

ツアーから離れている間に、バーティはオーストラリアの女子プロクリケット・リーグに参加し、その傍らではブリスベンのテニスセンターで1回16.50オーストラリアドル(約1600円)という安さでテニスを教えたりもしていたという。

↑写真は2019年度「ウィンブルドン」でのバーティ(Photo by Matthias Hangst/Getty Images)

だがプロテニスツアーを離れたことでバーティはリフレッシュし、まだテニスでやり残したことがあるという思いで戻って来た。復帰初戦となった2016年の「WTA250 ノッティンガム」では、既にランキングを失っていたので予選から出場しなければならなかったが、バーティは本戦まで勝ち上がり、準々決勝で当時世界17位、第1シードで後に優勝したカロリーナ・プリスコバ(チェコ)に2度のタイブレークの末に敗れるという健闘を見せた。

その後バーティは2017年のクアラルンプール大会でシングルス初優勝。2018年にもシングルスで2つのタイトルを獲得すると、2019年にはまず「WTA1000 マイアミ」、さらに「全仏オープン」を制して23歳で世界女王となり、その年の「WTAファイナルズ」でも優勝。ちなみにこの年から女子のファイナルズが中国の深センで開催されるようになり、資生堂がスポンサーについたことで賞金が高額となった同大会で、バーティは442万ドル(約5億6500万円)を獲得。男女を通じてテニス史上最も高額な優勝賞金だった。

↑写真は「WTAファイナルズ・深セン」でのバーティ (Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

2020年は「全豪オープン」の前哨戦であるアデレード大会で優勝するが、「全豪オープン」では後に優勝した第14シードのソフィア・ケニン(アメリカ)に準決勝で敗退。そして同年3月から、新型コロナウイルスの感染拡大によりテニスツアーは約5ヶ月にわたって中断される。だが夏に北米でツアーが再開されても、バーティはパンデミックの中、家族や親しい人々の住むオーストラリアに留まることを選び、「全米オープン」にも、5ヶ月遅れで開催された「全仏オープン」にも出場しなかった。

2021年にツアーに復帰したバーティは、「ウィンブルドン」で優勝。しかしこれによって子供の頃からの夢を叶えた彼女は、それ以上テニスを続けるモチベーションをほとんど失ってしまう。引退を発表した時にバーティは語った。「人生をかけて一つの目的のために努力してきて、“ウィンブルドン”優勝という本当の夢が叶った時、まだあと少しだけ満たされていない部分があった。それが“全豪オープン”だった」

↑写真は「ウィンブルドン」でのバーティ(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

そして2022年の「全豪オープン」でテニスにおける最後の夢を叶えると、バーティは世界女王のままで鮮やかに引退していった。「前にも一度引退したけれど、今度は全く違う気持ち。テニスが私に与えてくれたことすべてにとても感謝している。テニスは私の夢をすべて叶えてくれた。でも今は引退する時。そして他の夢を追いかけたい」とバーティは時に涙を浮かべながらも、落ち着いた表情で語った。

バーティは2021年11月にプロゴルファーのギャリー・キシック氏との婚約を発表しており、2022年中には挙式を考えているとも話していた。

3月にプロテニスからの引退を発表し、翌4月には早くもゴルフ大会に出場。さらに7月にも他のセレブリティらと共にゴルフのエキシビション大会に参加する予定を発表。「自分が参加することで、もっと多くの女性や女の子たちが世界中でゴルフをするようになってくれたら嬉しい。それに地域のコミュニティやチャリティーに貢献する機会でもある」と話すバーティ。たゆみない努力でテニスにおける夢を現実にしたように、これからも公私にわたってたくさんの夢を叶えていって欲しい。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※アイキャッチ写真は全豪オープンでのアシュリー・バーティ
(Getty Images)

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