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グランドスラム王座への道~第2回 新悪役?傷心の少年?ダニール・メドベージェフ

「全米オープン」の優勝トロフィーを抱えるメドベージェフ

このシリーズではこれまでにグランドスラム制覇を遂げたチャンピオンたちや、これから優勝を目指す選手たちをランダムに取り上げ、それぞれの「王座への道」を紹介していきたい。今回ご紹介するのは、2021年の「全米オープン」で見事初優勝を遂げたダニール・メドベージェフ(ロシア)だ。

1996年2月11日生まれ、現在26歳のメドベージェフは、1997年生まれのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)や、1998年生まれのステファノス・チチパス(ギリシャ)らと共に、今後ますます活躍が期待されている「次世代」トップ選手の一人だ。だが、中でもメドベージェフはグランドスラムにおいても世界ランキングにおいても、他の次世代選手たちに一歩先んじた。2021年3月には、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、アンディ・マレー(イギリス)の「ビッグ4」以外では実に16年ぶりに、世界2位の座に就く。

(Getty Images)

グランドスラムでは2019年の「全米オープン」で初めて決勝に進出し、フルセットの末にナダルに敗れた。2021年「全豪オープン」決勝では、ストレートでジョコビッチに敗退。だが同年の「全米オープン」決勝では、きっちりとジョコビッチにリベンジを果たして見せた。2005年の「全仏オープン」から2022年の「全豪オープン」までグランドスラムは67回開催されているが、その間のビッグ4以外の優勝者は、フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)、スタン・ワウリンカ(スイス)、マリン・チリッチ(クロアチア)、ドミニク・ティーム(オーストリア)、そしてメドベージェフの5人だけだ。

だが先に名前を挙げた次世代スター選手3人のうちで、最初に脚光を浴びたのはズベレフだった。ズベレフは2017年11月、20歳の時にキャリアハイの世界3位に到達。チチパスは20歳だった2018年の11月には15位まで浮上しているが、メドベージェフが20歳だった2016年の11月にはまだ世界100位前後だった。

「全豪オープン」でのメドベージェフとチチパス(Photo by Quinn Rooney/Getty Images)

そんなふうに同世代のズベレフやチチパスに後れを取っていたメドベージェフだが、2019年の後半に一躍注目を浴びる。7月末から始まった「ATP500 ワシントンDC」、「ATP1000 モントリオール」、「ATP1000 シンシナティ」、「全米オープン」、「ATP250 サンクトペテルブルク」、「ATP1000 上海」と、6大会連続で決勝に進出し、そのうち3大会で優勝したのだ。ワシントン大会開幕前は世界10位で、ズベレフが5位、チチパスが6位だったが、上海大会終了後はメドベージェフが世界4位、ズベレフ6位、チチパス7位となっていた。

またグランドスラムに関しても、ズベレフとチチパスは長い間、他の大会では優勝できていてもグランドスラムで結果を出せていないと言われ続け、ズベレフが初めて、そしてこれまでにただ一度決勝に進出したのは、メドベージェフが決勝進出した1年後の2020年「全米オープン」。チチパスのこれまで唯一の決勝進出は2021年「全仏オープン」でのことだ。

とはいえ2019年後半に脚光を浴びたメドベージェフが、その後は順風満帆に現在の地位を築いたというわけでもない。上海大会の後、メドベージェフは疲れ切って、続く「ATP1000 パリ」では初戦敗退、初めて出場した「Nitto ATPファイナルズ」ではチチパス、ナダル、ズベレフに全敗した(チチパスが優勝)。

「全豪オープン」でのメドベージェフ(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

2020年最初の大会となった国別対抗戦「ATPカップ」ではシングルス4勝1敗という結果を出すが、「全豪オープン」4回戦でワウリンカにフルセットの末に敗れると、その後の2大会で1勝しかできずにいたところに、パンデミックで大会がすべて休止となった。

ツアー再開後、「全米オープン」では準決勝に進出し、後に優勝するティームに敗れる。苦手なクレーコートシーズンは、「全仏オープン」など2大会で初戦敗退してしまうが、その後に室内ハードコートの大会が始まると、前年に初戦敗退した「ATP1000 パリ」、全敗だった「Nitto ATPファイナルズ」、年をまたいで翌2021年の国別対抗戦「ATPカップ」で3大会連続優勝。「全豪オープン」でも準優勝を果たして、世界3位にたどり着く。

そして3月にマルセイユで優勝して、世界2位に。それから7月末の「東京オリンピック」まで安定しない成績が続くが、「ATP1000 トロント」で優勝、「ATP1000 シンシナティ」でベスト4入りして、ジョコビッチの年間グランドスラムがかかった「全米オープン」に臨む。

通常のツアーの日程にオリンピックが加わって、多くの選手がかなりの疲労を抱えていた「全米オープン」。ナダル、フェデラー、前回優勝のティームは怪我のために欠場となり、ジョコビッチの年間グランドスラムを阻むのは困難かと思われた。だがメドベージェフは、決勝までの6試合でトップ30の選手一人、トップ15の選手一人に当たっただけで、5試合をストレートで勝ち進んだ。

一方のジョコビッチは、初戦の世界145位ホルガ ビートス ノディシュコフ・ルーネ(デンマーク)、3回戦の世界56位錦織圭(日本/フリー)、4回戦の世界99位ジェンソン・ブルックスビー(アメリカ)にそれぞれ1セットずつを落とし、準々決勝では世界8位のマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)とまたも4セットを、準決勝では世界4位のズベレフとフルセットを戦って決勝に進んだ。

2021年全米オープン決勝試合後のメドベージェフとジョコビッチ(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

決勝での大方の予想は世界王者ジョコビッチの年間グランドスラム達成と単独トップに立つグランドスラム21回目の優勝で、万一メドベージェフが勝つとしても、フルセットの末であろうと思われた。だが落ち着いた辛抱強いプレーを見せたメドベージェフは、6-4、6-4、6-4のストレートで勝利。

メドベージェフはエフゲニー・カフェルニコフ、マラト・サフィンに続くロシア人男子選手として3人目のグランドスラム王者となった。当時メドベージェフはこう言った。「キャリアの中でグランドスラムで優勝できるかどうかは誰にも分からない。僕はいつも言っていた、もし優勝できなくても、ベストを尽くしたと言えるようにしたいと」

2022年の「全豪オープン」ではナダルに大逆転負けを喫して準優勝となったメドベージェフだが、多くの大会に出続け、結果を残し続けた努力が実り、ついに2月28日にビッグ4以外の選手としては18年ぶりに世界ランキング1位の座をつかんだ。残念ながらインディアンウェルズ大会での早期敗退により3週間でジョコビッチに世界王者の称号を返すこととなったが、次のマイアミ大会でベスト4以上の結果を出せばまた世界1位に返り咲ける。

「一生1位にならないより、一週間でもなった方がいい」と語ったメドベージェフ。癇癪を起こしてラケット破壊をしたり、観客を煽るなどしてテニス界の新しい「悪役」という見方をされることもあるが、「全豪オープン」の観客の心ない野次について「少年は夢を見るのをやめた」などと話して純な一面を持つことも見せた。

子供の頃から勝つためなら相手が音を上げるまでいつまでもロブを上げ続けることを厭わなかったというユニークなメドベージェフが、これからどこまで強い王者に育っていくのか、見守りたい。

※アイキャッチ写真は「全米オープン」の優勝トロフィーを抱えるメドベージェフ
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

WOWOWテニスワールド編集部

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