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女性の権利と平等のために闘う元世界女王「無意味な規則には従わなくていい」

写真は2022年ファッション イベントでのビーナス

アメリカでは、3月は女性史月間として歴史上や現代の女性の活躍に焦点が当てられ、様々な企画や活動が行われる。これまで素晴らしいキャリアを築き、テニス以外でも世界的な活躍を見せるビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)が米誌Vanity Fair(オンライン版)のインタビューに答え、特に情熱を持って取り組んでいる男女の賃金の平等について語った。

テニスの元世界女王であるビーナスは、男女の賃金の平等を広く訴えかけてきた選手の一人だ。「私たちが、平等な賞金額をもらえた時を覚えているわ。やっと実現したのよ」とビーナスは当時を振り返った。ビーナスが「ウィンブルドン」で優勝した2007年、ようやくグランドスラム4大会すべてで男女同一の賞金額が実現したのだ。「まだまだ闘うつもりだったから、辛かった。ずっと長いこと闘い続けてきたけれど、プラカードを下ろす時が来たの。またあの時の気持ちを味わえたらすごく嬉しいわ」

ビーナスのファッションブランドEleVen by Venus Williamsは、他の小売業者も巻き込み、Privilege Tax運動と名付けた男女の賃金の不平等への関心を高める活動を行っている。同時に、恵まれない環境にいる女子の生活の向上に貢献する団体Girls Inc.への寄付も募っている。

「今年2年目なの。関心を高めて、草の根レベルで支援を行えることは素晴らしい機会だし、とてもやりがいがある。私たちにとって1年のうちで最もお気に入りの月だし、個人的にもお気に入り。だって、当たり前だけど、私たちは女性を応援しているから」

ビーナスは男女平等賃金にこだわる理由や、反抗者であることの意義、そして信頼されている実感がもたらす力について語った。

Vanity Fair:あなたが賃金の平等について語る際、プロデビューして6年後の2000年に「ウィンブルドン」で優勝した時のことを話題にすることが多いと思うのですが。

ビーナス:「ウィンブルドン」で優勝するとは思っていなかった、もちろんずっと勝ちたかったけど。ちょっとおもしろかったのは、やっと平等な賞金を得られた年に優勝できたことね。ビリー・ジーン・キング(アメリカ)が観客席にいたのも良かった。彼女は女子テニスのすべてを引っ張ってきた人だから。すごく特別な瞬間だった。またあの時に戻りたいわ。

Vanity Fair:その瞬間が、今も取り組んでいる大義への道のりのきっかけになったと感じていますか?

ビーナス:それよりずっと前に始まっていたわ。私の母は、もし何か間違っていることを見たら、正しいことのために立ち上がりなさいっていつも言っていた。もし私が近くにいてできることがあれば、周りの支持を得られなくても正しいことのために立ち上がってきた。そういう意味では、ずっと前に始まっていたことだったけれど、何もプランはなかった。ただテニスをプレーしようと思っていただけだから、その瞬間に自分がいて、物事が動き始めて、それがしっくりきたの。

Vanity Fair:あなたのキャリアを通じて、持続した勢いを保ちながらこの問題に取り組んでいますが、それが重要なのはなぜですか?

ビーナス:この問題は、2007年の時と同じように、現代でも重要なの。女子サッカー界でも、長い闘いのあと同一賃金が達成された。90年代に、ミア・ハムや他の選手たちは素晴らしい実力を見せていた。彼女らは何十年も素晴らしいプレーをしてきて、やっとそれが認識されたの。とても長い闘いだった。でもこれは、スポーツ界での話で、世界中の他の業界ではまだまだ。だから多くの企業が力を入れているのは素晴らしいことね。トップレベルがリードしていく必要がある。

Vanity Fair:昨年、Privilege Tax運動は、ロサンゼルス近郊の女の子たちのために2万ドル(約237万円)の寄付を集めました。そのお金で彼女らの生活はどのように変わりましたか?

ビーナス:すべてのことに価値がある。女の子たちは賢く、素晴らしい子たちばかり。話す機会があったけれど、とても感心した。彼女たちには、あらゆるチャンス、あらゆる機会が必要なの。彼女たちには、信じてくれる人が必要。私は、家に自分を信じてくれる人がいた。家の外でも、私を信じて、賭けてくれる人がいた。みんな、そういう人が必要なのよ。今年は、昨年の目標を超えることを計画しているわ。

Vanity Fair:自分の家の近くで、ご自身で体験したこの問題に取り組むことは、どのような意味がありますか?

ビーナス:私には姪がいて、彼女は大きくなっている。そして彼女が成長するにつれ、この問題が重要でなくなっていくことを望んでいるわ。彼女が仕事を始める頃、できたらテニスをプレーする頃には、この問題が彼女や彼女の娘たちとの会話にのぼらないことを願っている。そして、もし彼女がこの問題について語らなければいけない状況なら、その時に向けての心構えを授けたい。

Vanity Fair:この問題において、交差性(性別、人種など差別に様々な要因が重なること)は重要ですか?

ビーナス:アフリカ系アメリカ人の女性はとりわけ影響を受けている。職場でも、より多くの困難がある。統計でも、男性の1ドルに対して女性は平均して82セントか84セントしか稼いでいないと言われるけれど、アフリカ系アメリカ人の女性はそれよりさらに少ない。それは実際に起っていることで、私たちはそこを話していきたい。

私たちの給料、得ているものに透明性をもたせることが重要なの。それでなければ何が違いなのか分からないから。大企業であれば特に、それを知っているのは人事部の人だけ。アフリカ系アメリカ人の給与に関する統計は多くないので、その部分の対話をしていくのが重要になる。

Vanity Fair:多くの場合、私たち女性は報復が怖かったり、自分には価値がないと考えたりして、声をあげずにいてしまいがちです。あなたが女性に対して、悪びれず、怖がらずに生きるよう勧めるのはなぜですか?

ビーナス:女性は、そうすることを学びつつあると思う。性格の違いもあるし、自然とできる人もいれば努力しなければできない人もいる。でも、女性は真実のために立ち上がる必要がある。要求しなければ、何ももらえない。だから、口を開いて話さなければ。要求するのに失うものは何もない。一歩踏み出すこと、交渉することを怖がらないこと。素晴らしい人というのはそうたくさんはいない、だからあなた自身が素晴らしい人間になって、自分の価値を知って欲しい。

Vanity Fair:EleVenの最新の、ザ・バットマンをテーマにしたコレクションは“反抗的な女の子たち”のためのものだそうですね。反抗的な女の子であるということは、あなたにとってどういう意味を持ちますか?

ビーナス:それは、規則に従わなくもていい、という意味よ。世の中には馬鹿げた規則がたくさんあるでしょう。私は馬鹿げたことが嫌いなので、すぐそういうものを壊してしまう。筋が通っていて、すべての人のためになる規則もある、そういうものには従うわ。でももし規則が無意味だったり、自分に適さなかったり、その規則が最高の自分であること、素晴らしい自分であることを妨げるようなら、それらを自分の役に立つように変える時がきた、ということよ。

※為替レートは2022年3月16日時点

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2022年ファッション イベントでのビーナス
(Photo by Edward Berthelot/Getty Images  )

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