有名なテニスコーチのパトリック・ムラトグルー氏は、「全豪オープン」決勝のダニール・メドベージェフ(ロシア)との試合で目についたラファエル・ナダル(スペイン)の弱点を3つ挙げ、ナダルが同大会で21度目のグランドスラム制覇を果たしたことが、これによってより一層驚くべきことになっていると話した。英EXPRESS紙のオンライン版が報じている。
ナダルよりも10歳若いメドベージェフは、決勝が5セットの長丁場になれば有利になるものと思われていた。しかし、この壮大な熱戦の末に頂点に立ったのは35歳のナダルであった。2セットを先取されたところから逆転勝利を飾ったナダルは、2009年以来となる「全豪オープン」タイトルを手にした。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が論争を巻き起こしながらオーストラリアから強制送還されたことを受けて、メドベージェフを同大会の優勝候補と見る人は多かった。
コーチとしてセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)やステファノス・チチパス(ギリシャ)といった錚々たる選手たちを指導しているムラトグルー氏によると、ナダルは圧倒され、極度に緊張してミスを連発していたにも関わらず、試合に勝つ方法を見つけたのだという。ムラトグルー氏は自身のInstagramに投稿した動画でこう語っている。
「ナダルはこの試合に負けると誰もが思っただろう。彼は圧倒されていた。極度に緊張していた。普段よりずっと多くのミスを犯していた。彼の一番の資質は立ち直る力であり、闘いを愛する心だという点には、誰もが同意するだろう。だが彼は闘いを愛している。厳しい状態にあるのを愛している。たいていの選手はそういう瞬間が好きではないけれど、彼はそういうのが大好きだ。それこそが彼が生きていると感じ、自分らしくいられる瞬間なんだ。そして、それが彼のキャリアを形作ってきた」
「“全豪オープン”でナダルが見せたのは、過去20年の間で最悪と言っていい体の状態だ。
あの試合では体力が大きく物を言うだろうと思ったし、ラファは前半のセットを取らなければならないと思っていたよ。そして実際には、その反対のことが起きた」
「彼はラリーを短くしようとはせず、トップスピンをかけて、ラリーを受け入れていた。そして最後には、マッサージを必要としたのはダニールで、ラファはぴんぴんしていた」
この勝利により、「ビッグ3」全員がグランドスラム20度優勝で並ぶという現実離れした時代において、ナダルが最初にその均衡を破ることとなった。
ジョコビッチとロジャー・フェデラー(スイス)にとって不吉なことに、次に開催されるのは、ナダルがキャリアを通じて3試合しか落としていない「全仏オープン」だ。ジョコビッチの新型コロナワクチンに関する問題とフェデラーの年齢により、ナダルは今や、テニス界を分断する「史上最高の選手」論争で有利な立場にあると考えられる。
そして、ムラトグルー氏が指摘した3つの弱点にもかかわらずナダルが今回の優勝を成し遂げられたという事実は、テニス界でグランドスラム優勝の期待がかかっている新世代の選手たちへの警告となるかもしれない。なぜなら、「圧倒的な」メドベージェフのパフォーマンスでさえ、必要とされるものには足りなかったのだから。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2019年のムラトグルー
(Photo by Michael Owens/Getty Images )
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