有名なテニスコーチのパトリック・ムラトグルー氏は、ニック・キリオス(オーストラリア)のように気まぐれで情熱的な人物は、テニスというスポーツにとって良い存在だと感じている。セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)やステファノス・チチパス(ギリシャ)らのコーチを務める51歳のムラトグルー氏は、何のスポーツをプレーしているかに関わらず、キリオスには観衆を惹きつけてスタジアムを満杯にする能力があると考えているようだ。スポーツウェブメディアSportskeedaが報じている。
「プレーしているのがシングルスかダブルスか、混合ダブルスかという問題ではない。もしキリオスがチェスをしていても、スタジアムは満員になる気がするよ。一部の選手は、見ていて面白いという理由で、たくさんの観客を集めることができる。我々はアクションを、情熱を、熱狂を求めている。スポーツとは、選手が観衆と感情を共有することだ。ニックはそれにかけては名人だよ」ムラトグルー氏は、オンラインメディアTennis Majors上で自身がホストを務めている動画シリーズEye of the Coach(コーチの目)でこう語った。
ムラトグルー氏は、厳格な「行動規範」はキリオスのような人物の個性を殺してしまいかねず、そうした選手の活躍を阻んでしまうと考えている。彼はさらに、罰則を伴わずに自分を表現する自由を選手に与えることが重要だと感じている。
「ニック・キリオスをもう1人生み出すことはできないけれど、見ていてとても楽しい選手は他にもいる。そうした選手たちが純粋に自分たちの個性を表現できるように、あらゆる機会を与えるのが重要だ。もし行動規範が極端に厳しければ、ふるまいや個性の多様性を殺してしまうことになる。なぜって、テニスコート上で全ての選手たちがほとんど同じように振る舞うことになるからね」
キリオスは長年、コート上での行動によって議論を巻き起こしてきた。具体的には、やる気をなくして努力をやめるといった行動から、怒りに任せてコートに椅子を投げ込んだり、試合関係者に対して卑猥な言葉を叫んだりといった具合だ。ムラトグルー氏によると、キリオスのような選手は罰金を科されることを気にしておらず、ファンに忘れられない体験を提供することを一番の関心事としているという。
「たいていの選手が罰金を科されないように努める一方で、ブノワ・ペール(フランス)やキリオスのように、何千ドルもの罰金を繰り返し科されることを気にしない選手たちもいる。こういう選手たちは見ていて面白い。何か突拍子もないことが起こるかもしれないからね。こういう選手たちが、スタジアムを観客で埋める。彼らは僕たちのスポーツに大変な興奮をもたらしているし、新たなファンを呼び込んでもいる。だから、僕たちには彼らが必要なんだ」
今年の「全豪オープン」で、キリオスはかなりの波乱を巻き起こした。現在26歳のキリオスは、シングルスでは2回戦でダニール・メドベージェフ(ロシア)に敗退した。しかし、タナシ・コキナキス(オーストラリア)と組んで出場した男子ダブルスでは、観客を魅了し続けた。2人はシード勢を何組も打ち破り、同胞のマシュー・エブデン(オーストラリア)とマックス・パーセル(オーストラリア)のペアとの決勝に勝ち進んだ。そして決勝では、7-5、6-4でキリオス/コキナキス組が勝利し、見事に地元観衆の前で優勝を果たした。
「全豪オープン」の男子ダブルス決勝に出場する選手が全員オーストラリア人選手となるのは、1980年以来のことであった。また同大会の男子ダブルスをオーストラリアのペアが制したのは、トッド・ウッドブリッジ(オーストラリア)とマーク・ウッドフォード(オーストラリア)のペアが優勝した1997年以来のことであった。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ATPカップ」でのキリオス
(Photo by Brendon Thorne/Getty Images)
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