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準決勝敗退。それでもシフィオンテクを推す理由

写真は「全豪オープン」でのシフィオンテク

「ダニエルのテニスが素晴らしかった。あんなプレーをされてしまったら、止めるのは無理ですね」

イガ・シフィオンテク(ポーランド)は素直に相手を称えた。準決勝でダニエル・コリンズ(アメリカ)に4-6,1-6の完敗。優勝した2020年全仏以来のグランドスラム決勝進出はならなかった。

コリンズのアンフォーストエラーは13本で、第2セットはわずか2本。シフィオンテクのアンフォーストエラーも同じ13本だが、27本のウィナーを決めたコリンズは、厳しい攻めと安定感を両立させていた。

「彼女がアグレッシブにプレーしてくることは覚悟していたけれど、私が試合で受けた中で一番速いボールだったと思います。彼女はしっかりコントロールして打っていたので、リスキーというわけでもなかったし」

回転量が少なめで伸びてくるコリンズのフラット系の球質は独特で、「反応が遅れていたと思う。彼女のプレーが本当に速かった」と対応に苦労した。「もしも」の話はしたくないけれど、と前置きをした上で、シフィオンテクはこう続けた。

「もっとラリーをする機会があったら、それと、彼女より速くプレーするだけでなく、ポイントの行方を左右する戦術が使えていたら、とは思います」

それでもシフィオンテクは「彼女の今日のプレーをリスペクトします。完璧な試合でした。そういうこともありますよ」と自分を納得させるように話した。

「悔いはまったくありません。今できるベストを尽くすことができたので」の言葉は本心だろう。快勝を続け、失セット0で優勝した20年全仏とは対照的な今大会の勝ち上がりだった。ソラナ・シルステア(ルーマニア)との4回戦、カイア・カネピ(エストニア)との準々決勝はともに1セットダウンからの逆転勝ちだった。準々決勝までの5試合に要した時間は9時間32分で、アシュリー・バーティ(オーストラリア)の5時間4分より4時間半も多かった。準々決勝の所要時間3時間1分は自己最長となった。

力を出し尽くしたという充実感が「悔いはない」と言わせるのだろう。とりわけ、逆転勝ちした2試合が強い印象を残した。シフィオンテクも「ソラナとカイアとの試合は、本当に激しかったし、気持ちで勝てた。多くのことを成し遂げられたと思う」と振り返っている。

シルステアを破った4回戦では、こう話した。

「私は自分の中の疑いを乗り越えなくてはならなりませんでした。なぜなら、第1セットを失った試合では良い結果が残っていなかったから。こういう試合は自信につながります。常に前に突き進むタイプの選手に対し、巻き返すのはかなり難しいことですが、それができました」

第1セットを落とした試合では、大会前の時点で8勝24敗。以前の大坂なおみと同じで、典型的な先行逃げ切り型だった。ところが今回、よりによってシルステア、カネピという、調子に乗せたら手に負えない難敵を逆転で破ったのだ。

ハードコートを克服したのも大きかった。20年に優勝、翌21年には8強入りと全仏の成績が突出し、ほかの四大大会では最高で4回戦止まりだった。球足の遅いクレーコートはシフィオンテクの庭だ。脚力を生かし、どの位置からでも強打を放つ。余裕を持って打点に入ると、わずかにタメを作り、コースを隠した上でウィナーを決める。だが、ハードコートにはやや苦手意識があった。

「2年前まではハードコートでは自分のプレーができないと感じ、相手のやることに対応するだけでした」とシフィオンテク。だが、ハードコートが舞台の四大大会で初めて4強入りし、「自由にプレーできるようになった」と自信をつけた。

つい「4回戦止まり」と書いたが、どの選手にとってもグランドスラム4回戦は立派な成績だ。優勝した20年全仏以降、シフィオンテクが四大大会で4回戦以上に勝ち進むのは、今回で6大会連続となった。20歳の若さでこれだけコンスタントな成績が収められる選手は少ない。

19年にトロントでシフィオンテクと対戦した大坂は、「彼女のボールの叩き方はどの選手とも比べられない」と称えた。さらに「一番印象的だったのは彼女の動きでした。素晴らしく動きが上手」と敏捷な動きを褒めた。20年全仏の優勝で、シフィオンテクはそのボールストライカーとしての才能と身体能力を広く知らしめた。さらに今大会、先行を許しても動揺することなく着実に自分の戦いを遂行する力がついたこと、さらに苦手のハードコートを克服したことを証明した。

大会後に更新されるランキングでは、自己最高に並ぶ4位に浮上することが確定している。女王バーティを追う一番手がこのシフィオンテクと見て間違いない。

(秋山英宏 )

※写真は「全豪オープン」でのシフィオンテク

(Photo by Daniel Pockett/Getty Images)

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秋山英宏

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1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行なう。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。現在、日本テニス協会広報委員会副委員長を務め、同協会の出版物やメールマガジンなどにも寄稿している。

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